職員会議で午後から練習が休みになった鳴と久しぶりにデートをする事になり映画館にやっては来たのだが、鳴は相変わらずの我が儘っぷりで先に席に座っとくからポップコーン買ってきて!あとコーラね!あ、サイズは一番大きいやつね!って。

おいコラ、久しぶりのデートだっていうのに愛しの彼女様をパシリにつかってんじゃないわよ。私はあんたの召し使いじゃあないんだよ我が儘王子!なんて口が裂けたとしても言えそうにもない小心者の私は急いで鳴に頼まれたものを買いに走る。

鳴に嫌われたくない。

鳴が私と付き合ってくれているだけで奇跡なんじゃないかと思うし、 付き合って三ヶ月経つが未だになんの長所も無い平々凡々な私を、否、平凡以下な私を何故選んでくれたのか不思議で仕方が無い。

都のプリンスともてはやされ毎日の様にお人形みたいに可愛いこたちやスタイル抜群の女の子に告白されている鳴が玉砕覚悟で告白した私とどうして付き合ってくれているのか本当に謎なのだ。もしかして何かのボランティアか罰ゲームか何かで私と付き合ってくれているのかもしれないと疑ってしまう程に鳴はモテているのだ。

鳴に頼まれたものを両手に抱え急いで走る。遅くなると文句を言われ機嫌を損ねてしまうのが目に見えている。

早く、急がなければと走ったもんだから右脇に挟んだコーラが滑り落ちそうになり、よろけて肩が誰かにぶつかってしまった。

「うわっ、すいません!!!」

あっぶねー!鳴のコーラ落とすとこだったよ。セーフ!!!

「大丈夫ですか?僕こそすみませんでした」

肩をぶつけてしまったお兄さんは私の目を見つめ、再度大丈夫ですかと尋ねてきた。

「本当に、大丈夫です!」

お兄さんはそれなら良かったとニコリと天使の様に微笑み、軽くちょいと手を挙げて去って行った。お兄さんより先に鳴のコーラを心配した自分が恥ずかしくなり、顔に熱が集中して赤くなる。

「名前!何ぼーっと突っ立ってんのさ!名前が余りにも遅いから迎えにきてあげたよ!」
「ごめんね。急いでたら人にぶつかっちゃって」
「ふーん。大丈夫だったの?」
「大丈夫だったよ!ぶつかっちゃったお兄さんが凄く優しくてかっこよかった!」
「・・・」
「・・・鳴?」
「だから名前、顔あかくなってんの?」
「え?違うよ、これは・・・」
「名前は俺だけみとけばいいの!わかった?!」

そう言って強引にキスしてきた鳴のせいで、とうとう私はコーラを落としてしまっていた。



キスで殺して。



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