さて困ったことになったと御幸は柄にもなく焦っている様で押しても引いても開かない体育倉庫の扉を叩き続けていて、私はというとこの状況を楽しんで心弾ませてもいる。


骨まで舐めてね。


体育祭の実行委員を二人で任され、練習で使ったネットやボールやらを片付けているうちに誰かが鍵を閉めてしまったみたいだ。

「おい!誰か周りにいねーのかよ!」

開けてくれよと御幸は大声を上げて扉を何度も叩くのだが、辺りには誰もいないらしくウンともスンとも応えは返ってこない。

「困ったな」
「…うーん。御幸は携帯持ってないの?」
「持ってたらこんなに焦ってないって」

体育倉庫には固く格子のはまった窓が一つあるだけで、あいにくその窓も格子のおかげで抜け出せそうにも無い。

「名前は携帯、持ってきてねーの?」
「うん…。教室に忘れてきちゃったみたい」

眉を下げて困った顔をしてみせてポケットに入っていた携帯の電源を切る。

「あ、けど御幸そろそろ部活の時間だから誰かが御幸がいないの気付いてくれるんじゃあないの?」
「それがさ、今日は体育祭の会議とかで監督いねーから練習オフなんだよね」

御幸は肩を落とし、ガシガシと頭を掻いた。

「だからさ今日、美穂と放課後に遊ぶ約束してたんだよね」
「美穂ちゃんと…。そうなんだ」

美穂ちゃんとは私たちと同じクラスで、つい最近御幸と付き合い始めたクリクリとした大きな瞳でいかにも女の子という風貌の可愛らしく学年でも人気の女の子だ。

「ぜってー美穂、機嫌悪くしてるわ」

御幸はそう言うと諦めたのかマットに座り黙り込んだ。私も御幸の横に並び座り込んだ。

小さな窓からの灯りは影り、あたりに早くも夕闇が広がる。半袖の体操服を着ていた私は寒さでぶるりと肩を震わせた。

「ん」
「…え?」
「これ、着ときなよ」

御幸は自分が着ていたジャージを脱ぎ私の肩に掛けた。そのジャージからは御幸の香りと微かな制汗剤の香りがして私は深くその匂いを吸い込んだ。

嗚呼、私はやっぱり御幸がどうしようもなく好きだ。

どうして御幸と一年のときからずっと友情を壊さずに隣りに居続けた私ではなく、二年に進級して同じクラスになった美穂ちゃんがいとも簡単に私から御幸をさらって行ってしまうのだ。

無意識に唇を強く噛んでいた様で、口内に鉄の味がじわりと広がる。

「御幸」
「ん?」
「寒いからさ、温まる事しようよ」

今の状況はというと、私が御幸の上に乗り掛かり御幸を組み敷いている体勢だ。

「おい!ちょっと待てよ」

御幸は口ではそう抵抗しているのだが身体は健全な男子高生なのだから仕方ない。

「大丈夫だよ。どうせ明日まで誰も来ないんだから」

にやりと口角を上げて笑い、身に付けていた体操服とキャミソールをたくし上げて脱いでみせると御幸はゴクリと喉を鳴らし、両手を強く掴まれ押し倒されゆっくりと二人でマットに沈んでいった。


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