「一也は私じゃない他の誰かと幸せになってね」

それじゃあね、と酷く疲れきった顔をした名前は何度も俺に好きだ愛してるだと幾千も発してきたその口で簡単に別れの言葉を吐き出した。

「おい、待てよ」

何年もの時間を一緒に共有しおいて、こんなに簡単に、呆気なく、たった一言で俺たちの関係を終わらしてしまう気なのか。

「一也がプロに入ってから、とても遠い存在に感じてたの、ずっと。私が一也の一番近くにいるはずなのにね。本当はずっと私は寂しかったの、毎日会いたくて仕方なかったし、普通にデートだってしたかったの。全部、全部、もう我慢するのも良い子の振りして一也を待ち続けるのも、全部疲れたの」

仕事の付き合い、遠征、試合、確かに名前に寂しい思いを沢山させていた。だけどさ、俺と愛し合った事や言葉、それは嘘じゃあなくて本当だ。それを、思い出すべて捨てて、清々しい顔して名前は俺を置き去りにどこに行っちまおうとしているんだ。

「冗談だろ」

一人で勝手に答えを出さないでくれよ。お願いだから考え直してくれ。

俺に別れを告げたその口で次は誰に愛の言葉を口にするんだ。

酷い冗談だろ。

「一也のマンションに置いてある私の物は、捨ててくれて構わないから」

俺の名前への気持ちをも置き去りにして、俺との思い出を上書き保存して、次に俺以外の誰を愛そうとしているんだよ。

「いままでありがとう。それじゃあね」

嗚呼、なんて清々しい顔をして泣いているんだよ。



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