偶然、学生時代に付き合っていた御幸と再会した。

「久しぶり」

私が好きだったあの爽やかな笑顔で、過去、二人の間にはなにも無かったかのように御幸は話しを続ける。

「元気してた?」
「うん。…御幸、なんか変わったね」
「そう?そんなに変わったかな。自分じゃあんまりわかんないもんだから」
「テレビで見るよりも、実物の方が断然格好良いね。私は前よりも良い女になった?」
「ん?名前は……そうだな、やっぱり学生時代と変わらねえよ。あの頃と同じ、って言ったら大袈裟だけど。……うん、俺が好きだった頃の名前と、なにも変わってねえよ」

なんて、なんて陳腐で在り来たりで薄ッぺらで真実みもないし嘘臭い言葉なのだろうか。高校を卒業すると同時に、いとも簡単に私を棄てたのは御幸じゃないか。

到底信じられないそのくだらない御幸の言葉を性懲りもなく信じ、心踊らせる私をどうぞ軽やかに嘲笑って抱き締めてくださいませんか。


どうせまたきみを愛すよ


御幸は静かに笑い、そうしてまた毒を孕んだ指先で私の頬をそっと撫で、ゆっくりと抱きしめてくれた。


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