「名前さん、俺と付き合ってくれない?」
「・・・どちら様ですか?」
「同じクラスなんだけど」
「えーっと、・・・み、みゆき君だっけ?」
「うん」

さぞかし可愛く微笑んでお断りします、と言ってやったのだけど放課後なんか奢るからと無理やり誘われ、学校から近いファーストフード店で二人で向かい合っている今に至る。

「ねえ?俺が奢るからって誘ったんだけど」
「自分の分は自分で払うから」
「名前さんのそういう所が好きなんだよね」

くっくっくっと喉を鳴らして笑う御幸君をジロリと睨み付ける。

「御幸君って、・・・野球部の、あの御幸一也君?」
「そう。今日たまたま監督が会議で練習オフになっんだよね」
「御幸君の名前、クラスの女子達が話してたの聞いた事ある」
「ハッハッハ。俺って人気者だから」
「そうみたいだね。だから私じゃなくて御幸君の事を好きな女の子とお付き合いした方が手っ取り早くていいんじゃない?」
「そりゃあそっちの方が手っ取り早くて良いけどさ、・・・俺は名前さんじゃなくちゃ嫌なんだよね」

さらりとそう言ってハンバーガーを口に運ぶ動作が、凄く綺麗だ。私は暫くそれに見取れていたらしく御幸君に名を数回呼ばれ、はっと我に返った。

「・・・名前さん?」
「っ!とにかく無理だから」
「なんで?好きな奴でもいんの?」
「別にいないけど」
「じゃあ、いいじゃん」

好きにさせる自信は有るよ、とニヤリと口角を上げる御幸君から、また目を逸らす事が出来ない。

「ふざけないで!私の何処がそんなに良いのよ?」

思わず大声を出していた。

御幸君は少々苛立たちそうに首筋をがりがりと掻いた。

「どこって言われても・・・、名前さんの全部が好きなんだけど」



これが馴れ初め


「あんときの名前、まじで怖かったから」


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