生き埋めの恋心



「私ね、もう我慢するのに疲れちゃった」

ごめんねと電話を通して聞こえる泣き声に、嗚呼もうこれで終わりなのかと他人事の様に思った。

「青道高校に入学して洋ちゃんが野球を真剣に頑張ってるのも、中学の頃みたいに毎日話したり出来ない事も全部理解してたつもり。けどね、メールも電話も、私からしないと最近は無くなってたよね」

名前は大きく息を吸い込み、呼吸を整えて言葉を続けた。

「洋ちゃんは、私がいてもいなくても何も変わらないと思うんだ」

そういえば最後に俺から連絡したのはいつだっただろう。それさえも思い出す事も出来ない。

「洋ちゃん、今までありがとう」

その言葉を最後に、耳触りな機械音が鳴り響いた。こちらこそありがとう元気でな、とか最後ぐらい格好付けたかったのだけれど言葉は何も出てこなかった。

二人で卒業式の日、桜の木の下で高校が離れても別れたりしないと約束したのに、毎日練習がしんどくても必ず一通はメールは送ると約束したのに、離れてもお互いを想い合うと約束したのに、どれも守る事ができなかった。

名前の事を忘れていたわけじゃない。好きだ。大好きだ。今でも変わらずに。名前なら我慢してくれるはずだ、大丈夫だと甘えていた。

約束も守れやしないし、もしかしたらまた名前を泣かしてしまうかもしれないけれど、それでも名前と別れたくない。

携帯の着信履歴を開き、名前に電話をかける。

男らしくないのも分かってる。それでも別れたくないんだ。好きなんだ。もう約束は破ったりしないと誓うから。

今更遅いよと笑って許してくれるかい?


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