哲に不満があるわけではない。


青道高校野球部キャプテンでストイックに練習を頑張っているのも勿論理解しているし、他校の女子から黄色い声援を受けても心乱れる事無くずっと私を想ってくれていて不満なんてあるはずないのだけれど、哲の寡黙で優しすぎる性格に甘え、私はどんどん我が儘になってしまっている。


「友達がね、彼氏と遊園地にデート行くんだって」


いつも通り、どんなに疲れていても寝る前に必ず電話をくれる哲に私はまた我が儘を言ってしまった。


「友達は毎週デートしてるんだって」


羨ましいなと私が呟くと、哲は小さくすまないと謝った。


哲は何も悪くないのに。いつも申し訳なさそうに謝る。悪いのは私なのに。毎日寝る前に哲の声を聞くだけで幸せだったはずなのに、哲と付き合えただけで幸せだったはずなのに、私はどんどん我が儘に、貪欲になってしまっている。


これでは余計に私という存在が負担であって哲のお荷物だ。自己嫌悪で自分が情けなくなり涙が零れ嗚咽が漏れた。


「名前、すまない。泣かないでくれ」
「ごめんね、我が儘ばっかり言って。哲は何も悪くないから謝らなくていいよ」


我が儘な私を許してね。


「夏が終ったら・・・、どこにでも好きなところ連れてくから、それまで我慢してくれないか」



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