思春期の過ち



「かーずー!」

授業終了を知らすチャイム音と同時に名前先輩が教室のドアからひょこりと顔を出して手招きしながら俺の名前を呼んだ。

「どしたんすか?わざわざ俺の教室まで来て」
「あのね、相談があるんだけど。ちょっといいかな?」

わかりましたと頷いて名前先輩の小さな背中を前に屋上までついて歩くけれど相談される内容なんて何となく分かってしまう。

「あのね・・・」
「哲さんと何かあったんすか?」
「なんでわかったの?!もしかして、エスパー?!」
「先輩が俺に相談してくる時は毎回、哲さん絡みじゃないっすか」

あー確かにね、と先輩はふにゃりと笑った。

「なんかさー、哲に愛されてる感じしないんだよねー」
「・・・先輩それ前も言ってましたよね?」
「だって哲ってあんまり感情を口とか表情にだしたりしないじゃない?そういうタイプじゃないって分かっててもね、時々ね凄く不安になるんだ」

弱いよね、私と。先輩は呟いて小さな肩がふるふると震えだした。

「名前先輩、泣かないで下さい」

抱きしめたくなるじゃないですか。

「っ、一也。ごめんね」
「俺は全然大丈夫なんで謝ったりしないで下さい」

このまま勢いに任せて抱きしめ、俺と付き合えば先輩を泣かしたりさせないなんて恰好良く言える訳もなく、情けなく先輩の頭を撫でる。

「一也は優しいね」

それは先輩のことが好きだからですよ。

「一也みたいな人と付き合えたら泣いたりしないんだろーね」

あー。これはもう抱きしめてめちゃくちゃにしても大丈夫なやつだよね?ね?


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