抱き締めた小さな体は心地よい熱量を放散して、おれの服に絡み付く。髪に頭を埋めれば甘ったるい匂いが鼻腔を満たしていくのを感じた。保健室のベッドに人が二人も寝転がってれば窮屈でうざったいはずなんだけど、不思議なことに全然嫌じゃない。むしろ好きかも。腕に力を込めた。花巻はおとなしく抱き締められてるまま。あー、いっそこのままふたりでどろどろに溶けちまいたいなあ。馬鹿みたいなことを考えてひとり笑う。今までのおれが見たらたぶん目を剥くに違いない。何かをいとおしく思うほど頭はイカれる。良識なんて頭の隅に追いやられ、しまいには消え失せる。でもやっぱり嫌じゃない。なんか、しあわせだから。しかし、当の花巻は様子が違っていた。かたかたかたかた、体が小刻みに震えてる。尋常じゃなく震えている。

「別にやらしーことする訳じゃねーしちったあ楽にしてろよ」
「やっ、やら!?」

やらしーという言葉に反応してその体は速度をあげてかたかたかたかた震え出す。しまった、余計緊張させたらしい。顔を覗き込むと茹でだこのように真っ赤。ああ、いとおしいなあ。そーっと不安げに見上げてくる目と、視線がぶつかった。


「しっしあわせだけど、どどどきどきしすぎてっ、死んじゃいそう、なんです」
「…そんな簡単に死なねえって」

かたかたかた相変わらず震えている体。こいつのこういうとこ嫌いじゃない。むしろ好き。断言できる。あー、しあわせ。つむじにキスをひとつ落として、それから重い目蓋を閉じゆっくりと眠りについた。



恋には中毒性がございますので
2010.03.14

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