0506 18:16

>これは偶然気付いてしまったことなのだが、誰かに話さないと脳みそパンクしそうなので聞いてくれ。俺は総務のしがないリーマンなのだが、ウチの会社には暗黙の了解がある。それは坂田と高杉を鉢合わせてはならないという協定だ。この二人、営業部のエース坂田と海外事業部のエリート高杉はまあ仕事はできるしツラもいい。
営業部の坂田は昼行灯の様でふらりと外回りに行き玉遊びで時間を潰しているとタレコミがあったと思いきや、無理だと言われていたデカい契約を取ってきたりして営業部を騒然とさせる事が多い。但し諸々の申請書はミスが多く汚しまくり、この度総務部のブラックリスト殿堂入りを果たした。
海外事業部の高杉は仕事はできるし頭もいい。新規プロジェクトを立ち上げては波に乗せ、自分の手を離れても大丈夫なレベルまで持っていく手腕は見事だが、とにかく人間関係のトラブルメーカーだ。変なフェロモンでも出しているのか、他社や自社の重役やら秘書やらなんやらが男女問わず引っかかる。一度聞いた時には「なんか知らねぇが勝手に入れ込んで勝手に破滅していく」とのことで改善の兆しがない。こいつも始末書の常連だ。
問題はそこではない。この一癖も二癖もある二人、仲が悪いのだ。決定的に。廊下でカチ会った日にゃどこのヤンキーかと思うくらいメンチの斬り合いが始まるし、社食でバッタリすれば小学生の様に口さがなく罵り合う。まあ側から見ても気が合わないんだろうなと思っていたが、触らぬ神になんとやらで、俺には関わりのないことだと思っていた。今日までは。
ところで俺は総務部だ。社内の便利屋の様に扱われるが、まあ備品の管理や福利厚生、セキュリティの管理から環境対策まで幅広いことには間違いない。
今俺の目の前には四枚の申請書がある。住宅手当の申請と引越しによる住所変更の申請書二組だ。何度目をこすって見ても同じ住所の、同じマンションの、同じ部屋である。申請者名は一組が坂田銀時、もう一組が高杉晋助。え?何コレどういうこと?あの二人いつも相手を唾棄するみたいに嫌悪してるけど?一緒に住んじゃうの?ルームシェアなの?仲良いの?
俺一人になった部署内でこの疑問に答えてくれる同僚はいない。いやもちろん正式な書類だし受理しますけどね?天変地異の前触れか。もしかしたら近々、暗黙の了解は無くなり、二人が並んで帰る光景が見れたりするのだろうか。 終 (冬路)

この会社で働きたい、働きたい、働きたい……………ありがとうございます好きです。
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