囚われた私は
※サクラ独白
もしも神様という架空でしかない人物が本当に存在するというならば、私は声を大にして叫び、願いそして祈るだろう。
しかしそれでも何も変わらないと知っているからこそ、そんなことをしても意味がないと理解しているからこそ、私は今日も変わらない日々を過ごすのだ。
彼がいようといまいと、時間なんてものは皆平等に過ぎて行く。例えどんなに願ったとしても、だ。
考えるにあの夜、そしてあの頃の私の持っていた考えは利己的なものにすぎなかった。何故何も言ってくれない、復讐なんかやめて、好きだから側にいて。どれもこれも、仮に私が彼の立場だったならそれはそれはウンザリするだろう。
彼には彼の道がある。私には私。そしてナルトにはナルトの。それなのに他人に自らの欲を要求するなんて、愚かしいにもほどがあるというものだ。
けれど、どこか心の片隅でサスケくんなら帰って来てくれると信じその帰還を待っていた時と同じように、自分のそんな愚かしい言葉でほんの僅かだけでも彼の心が揺らぐだろうと思っていた。
否、それしかなかったのだ。
言葉を伝える以外、なかった。
例え私があの時実力行使したところで彼に勝てるはずも無かったし彼が相手にするはずも無かっただろう。
ならばもし力があったら?
…やめだやめ。そんなこと考えていてはキリが無い。後悔なら何度だってした。だからこそ今現在修業に励んでいるのだ。
何度となくした後悔は月日が経てば経つほど増えていき、それでも変わらない日々を過ごしその度にまた悔やんで。彼がいた時は下手なことを言ってしまって後悔する程度だったのに今ではその彼と話すことすらない。
全てを投げ出して、いっそ彼のことなんか忘れてしまいたい。そう思った夜も何度もあった。泣いて泣いて泣いて、誰も見えない場所で感情を吐き出して。
でも、出来なかった。
そしてその結果がこの状況である。
何度も会いたいと願っていたその彼が、まさに今"木ノ葉の忍"である私に向かって激しい殺気を放ち私のものだったクナイを突き付けようとしていた。彼を殺めるために来たのだからそのクナイにはもちろん私が作った猛毒が塗られている。
この場所、つまり彼の元へと来るまでに覚悟は決めたはずなのに。私はその切尖を彼に触れることすらなく止めてしまった。背後にいた私に彼が気付かないはずもなかった。
私は今まで彼に何をしてあげられたのだろう。その寂しさをもっと理解してあげれば良かった。悲しみをもっと分かち合ってあげたかった。もっと頼って欲しかった。
そう、あの夜私が伝えたことに、今も偽りなんてないの。
"ありがとう"
偽り無いあなたのその言葉が、今でも私を縛り付ける。
囚われた私は
(どんなに堕ちても、あなたを)
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サスサク作品二つ目。
あの別れの夜からの思い、それを引きずり離せないサクラの心情を書いてみました。
本当にサスケが世間一般が言う悪人なら迷いなく断ち切ることが出来たけど、"ありがとう"と言ったサスケを知っているサクラにはそれが出来なかったのかな…と。
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