1.ヴィンセント=シアーズ

(play板に投稿)
(お借りした方→アルマースさん、エステリアさん、(ヴィンセントさん))









「ヴィンセント=シアーズ?」

こくり、と頷くとエステリアは不思議そうな顔をしてから、にぃと笑いレヴィを見る。



つい遅くまで最近手に入れた銃を解体したりして弄くっていたらすっかり遅い時間になったらしく、廊下に出た頃には周りの部屋の明かりは消えていた。ずっと部屋にいたので風にあたりたく甲板に出ると先客がいたようで、こちらに気付くと「よっ!」と手を振る。彼女の明るい笑顔に心が暖かくなるのを感じ手を振り返す。傍に寄ると酒を飲んでいるようで、あんたも飲む?と一杯差し出され、いただきますと返し口をつける。おいしいですと感想を言えば楽しそうに笑う彼女。その後酒を飲みつつ話を聞いていた。区切りを見て、ふと聞いてみたかった事を思い出し尋ねる。そして冒頭に戻る。


確かエステリアは分裂前からいたと思う。自分は分裂後だ。自分の尊敬する船長、アルマースの父であるヴィンセント=シアーズ。今の船長があるのは彼の影響もあるだろうし、彼は海賊で船長だった人だ。人数は増えたり減ったりしたようだがアルマース一味とマルグリード一味を束ねていたような人だ自然と興味が沸く。
それで聞いてみたのだ。エステリアは教えてやると笑うと、海を見て懐かしそうに微笑んだ。エステリアの視線の先に目をやる。夜なのでよくわからないがあたり一面暗い海で占めている。

「ヴィンセント船長はさ、すっごい船を持ってたんだ。大きさ、装飾、木の素材とか…もう、そりゃあ本当にすごくてさ、感動したんだよ。」
うっとりと懐かしそうに話すエステリア。オレの視線に気付いてキザっ歯を見せてオレの頭をがしがし掻いて笑う。
「そんな顔すんなって!あのな、船って大事なのさ。船ってのはその持ち主…船長やクルーで変わるんだ。……だから、そのすっごい船に乗って指揮していた人、ヴィンセント船長はすっごい人だったんだよ」
船長の話を聞きたいのに何故船の話を、と無意識に目で訴えていたらしい。そして船長は陽気な方で良い人だとか、そういえば船でこんな事があっただとか、沢山聞かせてもらった。

聞いてる内にアルコールが回り、時間も遅かったせいか眠気が襲い段々と話が頭に入らなくなってきた。反応が少なくなっている事に気付いたエステリアは何なら寝てもいいと言ったが断固拒否した。年下で女性で…自分より少々背が高く力がありそうなものの、迷惑になりたくないし、プライドが許さない。
話を聞かせてもらった礼を言い、中へ戻ろうとふらつきながらも歩き出す。その背中を見送るエステリア。まだ少し酒の入った入れ物をくるりと回し、閉まったドアを見て尋ねる。



「あんたは船に乗れてよかったかい?後悔はしてないかい?」

あたしは、よかったと思ってる。

その声は星空に消え、また海の音が静かに聴こえた。












翌朝。部屋に戻ろうとしたものの眠気に勝てず、廊下に倒れていたレヴィは目が覚めてから我が尊敬する船長殿にお叱りを受けたのだった。

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