焦燥(過去ver)

(エアっ子、レヴィの伯父であり師匠のジルベールが出て来ます)













「おい、なんだぁその顔は?」

帰って来て出迎えたのは師匠の驚いた顔だった。

「……何でもない」

仏頂面で返せば予想通りの、今にも舌打ちをしそうな苛立った顔。本当に短気なのだ。
面倒にならぬ内にと師匠の横を通り奥に向かおうとしたが「待て」と呼び止められる。

「変な事に首突っ込んでんじゃあねぇよなぁ?」

「師匠、心配は要らない」

今日も図書館に行って勉強をしてきただけだ。が、その帰りだった。この町では海賊が嫌われているのに師匠は海賊の依頼も受けている。それを知った町の奴らが怒り、殴り掛かって来た。正直こいつらを倒すのは難しくないが、奴らのツボだと思う。それを話され鍜治屋の評判を落とされるのは困る。殴ってしまってはそれを認めるようなものだし暴力沙汰自体良くない。
結果右の頬が腫れ、腹を蹴られたので今でも痛い。


「…あんま無茶すんな」

振り返り見た顔は先程のように怒気は感じられず、後ろ首を掻きながら言う。雰囲気は落ち着いていて言葉の割に軽い声。無茶などしていない、と返せば溜め息を吐く。

「何を考えてるか知らんが、最近焦っているように見えるんでなぁ」

「そんな事、」

「ねぇってか?なら何だその話し方ぁ。お偉いさんにでもなるつもりか、あ?」

「人は変わるんだ、師匠」

オレは間違った事は言っていない。…しかも話し方に関していうなら師匠のようになるなんて真っ平だ。理想である気品の欠片もない野蛮な口調。師匠が使う分には構わないが、自分では使いたくない。

「あのなあ…人ってのは時間が経てば自然と変わるんだ。そんな急いでなぁ、頑張って背ぇ伸ばさなくていいんだよ」

「チャンスはいつ来るかわからんだ。準備するのに越した事はない」

「………そりゃあ…数年前の嬢ちゃんの事か?」

かったるげに話ながら後ろ首を掻いていた手が止まり、ぎらりとした目と絡む。
沈黙を合っていると解釈した師匠は視線を逸らしまた、はぁ、と溜め息を吐きオレを見る。先程の目の光は消えていた。

「まあいいがな。…あんま急ぐと転けるから気をつけろよぉ」

そう言って歩きオレの頭をぽんぽんと叩くと作業場へと戻って行く。その背を見送り自室へと戻り、図書館で借りた本を開く。…師匠の言葉が反芻する。

(焦ってなんか…)

いない。心の中で呟いた声は自信なさげだった。
考えぬようにと頭を振り、並べられた字を追う事に集中した。

[ 1/5 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -