3.私と彼の考え方
逃げる時に聞いた噂、アリスと宝石。私は自分の世界になんか戻りたくない。
「俺はどっちでもいいかな?俺自身が無事なら!」
「………え?」
意外な答えに素っ頓狂な声を出す。普通、アリスを護りたいとか、宝石を奪いたいとか、せめて元の世界に帰りたいとか…そういう考えを持っているんじゃないかと思っていた。うん、意外だな。
「貴方、元の世界に帰りたくないの?」
「んー、けど第一に自分の安全かな。仮に自分の世界に帰れるとしてもボロボロじゃ嫌かな」
なるほど。確かにこの知らない世界で危険に遭うのも大変、そう考えれば安全を取るのはわかる気がする。そういえば、此処で負った傷は自分の世界に戻ってもそのままなのだろうか?…まぁ私には関係ないけど。
「それじゃ護りに行きますか!」
「そうね」
ベンチから立ち上がった彼を見る。彼は私と行動してくれる。……でも本当は自分の世界に帰りたいのだろうか。
「葬歌ちゃん?」
「えぇ、行きましょう」
私もベンチから立ち上がる。もし彼が自分の世界に帰りたいと言ったその時、私は……。
「……そういえば私達アリスの居場所わからないわ」
「あ」
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