7.選択







監獄に居たくない。
だって私は何も悪い事なんてしてないもの。

だからこの世界に来た時もう彼処に戻らないと決めた。

なのに、
…なのに、この世界は無くなってしまうかもしれない。



『葬歌ちゃんも…死にたくないよね!』


「監獄になんて居たら生きてても何も出来ないのよ…死ぬのと変わりないわ…」


ベンチでぽつりと呟く。二人には聞こえないはず。



“私を護るものは方舟で助けてあげる“


「助け」とは元の世界に帰る事だろうか。でも私の求める「助け」とは違う。各々の今求める事を助けてくれるなら、もしかしたら私はこの世界に、ジェイとキャロルは元の世界に戻れるかも…。
無理なら、元の世界に帰る為だけの助けなら私はそれを断れば済む話。例えそれで私が死ぬ事になっても私はそれを受け入れる。

ベンチから立ち上がり、ジェイとキャロルの方へ歩く。キャロルは今まで通りの冷静な顔、ジェイは不安そうに私を見る。クスリと笑ってから私は纏まった考えを言う。


「アリスを護りましょう」

「え?葬歌ちゃん?」

「元々私たちはそうするつもりだったじゃない」

「そしたら帰る事になるかもしれない。君はそれでいいのか?」

「嫌よ。この世界に居たいもの」

ぽかんとする二人。キャロルさんは溜め息をつく。

「…矛盾してる」

「そんな事ないわ。私はこの世界に、貴方たちは自分の世界に…助けてくれるならそうしてもらうよう頼めばいいのよ。助けると言ったのはあっちよ?」

「無理だったら?」

「その時考えるわ」

死を覚悟で残るなんて言ったら止められそうだし言わない方がいいわね。



「ジェイ」

心配そうに見るジェイに笑い掛ける。

「私、こんな風に人に接するのは久々だと思うの。だからこの世界に来て話してくれて、一緒に行動してくれた貴方に感謝してるわ。だから、貴方が帰りたいと言うなら協力する」

「葬歌ちゃん…」



「……話が纏まったなら行こうか」

「えぇ」

「うん」

「アリスを護るならアリスを探さないと」

「アリスには守護者がいるわ。誰かから教えてもらえたら良いのだけど」



結局アリス探しに戻ってしまった。
私たちは自分の望む世界に居られる事が出来るかしら?

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