5.必要な嘘






白の男の人は宝石を護る側、あの2人は奪う側。元の世界に帰る為に奪ったんだ。



「葬歌ちゃん!葬歌ちゃん!」

後ろでジェイが息を上げつつ私を呼ぶ。振り返ると困った顔をしていた。

「追ってどうするのさ!」

「宝石を奪うのよ!元の世界に戻るなんて駄目!!」

「奪うって…戦うの!?」

「えぇ!!」

「ちょ…待って!!」

引っ張っていた手が反対の力が働き止まってしまう。見失ったらどうするつもりなんだろうか。ジェイは深呼吸して、私を見据えた。

「落ち着いて、葬歌ちゃん。」

「……。」

「宝石を奪うのが目的なら今戦わなくてもいいんじゃないかな」

「どういう事…?」

「隙をついて奪う。これなら…戦う事があるとしても今戦うより良いんじゃないかな?」


まぁオレがあまり戦いたくないんだけど!と苦笑いするのを見て少し吹き出す。
確かに奪うなら早い方が良いけどなるべく安全に確実にする必要はある。

「じゃあ、そうしましょう」

にこりと笑えばジェイもほっとしたように笑った。
隙をついて奪う…と言ってもどうしようか…。










「私達をつけて来たのはあんた達?」

声のする方を向けばあの2人組。何で気付かなかったと舌打ちしたいのを抑え、どう切り抜けるか考える。黄色い男の人は武器を持っていないようだが、女の人はトンファーを構えている。もう、戦闘かな。ジェイには申し訳ないけど。

「ま、待って!」

そこまで考えた時ジェイの声が聞こえた。

「オレ達、元の世界に戻る方法を探してた時に大きな音が聞こえて、来たら君達を見つけてついて!来ちゃったんだ!」

戦闘を避けられるかわからないけど説得している。女の人がちらっと私を見る。

「私と彼、此処に来るまでの記憶がないの」

少し表情が変わった。彼女らも同じって事かしら。

「ねぇ」

……ジェイと話していた「隙をついて宝石を奪う」。敵の立場のままだと難しいかもしれない。ならば、




「情報交換…しません?」

懐に入って隙を狙えば良い。

「お互いの目的の為に」

ジェイを横目で見てから2人に笑い掛けた。

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