青春を部活に捧げる | ナノ





「てか、今日は昼からなのに来るの遅くない?」

越前くんには目覚まし時計を壊したことを隠して、時計がおかしくなったと言ったらあんたの頭じゃなくて?って聞くからチョップしようとしたけど、見事に見切られてしまった。越前くん何者

「おかしいのはあの人たちのほうだよ!なにあれ?双子で戦ってるよ!?」
「いや入れ替わってただけだから」
「いや絶対ちがうね!あれはほんとに双子だよ。なんなら500円賭けてもいいよ」



なんて、見栄張ってしまったものだから



「まいどあり」
「…………………」

いきなり銀髪だった人がカツラを取って別人に変わってしまったから、あたしは越前くんに500円をカツアゲされてしまった。ったく、双子じゃないって知ってたんなら最初から言ってよ!

「あんたが先走って言い出したのが悪い」

早とちりな私が嫌いだ



「ん?あれって…」
「?なに」
「先生だ」

越前くんがファンタをぐびぐび飲んでるときに、先生が誰かと電話しているのが見えた。なになに?なるべく早く試合を終わらせる?先生、もしかして…

「彼女いるのかな」
「……………は?」
「ね、ちょっとファンタだいぶこぼれてるよ」
「あ、やべ」

越前くんとあろう者が大事なファンタをこぼすなんてどんだけ焦ってんのさ。あと400円あるから後でまた買う?あたしのお金!


「…あの人、大会の後にデートでもすんの?」
「さあ。わかんないけど、急いでるっぽい」
「ふーん…」

大方保健室の先生とかかな?いや、もしかしたら熟女好きで先輩教師とかも…!妄想がどんどん膨らむぜまったく!
すると越前くんは急に残ったファンタをぐびっと飲んでいきなり空のファンタを投げてゴミ箱にナイスイン

「え、え、どしたの越前くん」
「ねえ、だいぶ試合急いでるみたいだね」

「……………」

越前くんーー!?なに言う気!?先生めっちゃこっち睨んでるんだけど!

「あんまり青学をナメないほうがいーよ」

言っちゃった。言っちゃったよ。先生睨んだまま帰って行っちゃったけど


「ね、ねえ!なんであんなこと言っちゃったの!」
「べつに。青学を侮辱されたみたいだから」
「せ、青学のためにそんなこと言う越前くん初めて見た!たった数ヶ月なのに大人になったね越前くん!」
「そりゃどーも」

最初はケチで生意気で冷酷で英語をろくに喋らない帰国子女かと思ったけど、成長したもんだね〜…。お母さんはうれしいよ


「で、あんたはあの人と誰がデートするのか気になんないの?」
「へ?なんで?」
「…なんか気にしてたっぽいじゃん」
「え?別に?」
「…………は?」

「そりゃあもしかしたら保健室の先生かな、とか熟女な先生とかとデートするのかな〜って妄想はあるんだけどさ、誰かってとこまでは別に知らないでいいかな…って…。どうしたの越前くん?」
「……なんでもない」
「え?え?」

それから越前くんは帽子を深くかぶったままなにもしゃべりませんでした。あたしにはいったいなんだか理解不能です

2011/1/12