青春を部活に捧げる | ナノ




越前くんが勝った。よかったこれであたしの立場はアンタイだ。越前くんの勝利を確信し、アンタイって言葉を知っているあたしはほんとすばらしいと思う

越前くんが勝ってコートの外に向かっている最中、じゃこさんが真田が来ていると言ってコートのほうに走っていった。先生?なんでこの場所が分かったんだろ。まあそういうことは抜きにして、あたしもじゃこさんの後ろを追いかけながら先生のいるところへ行った

…ん?なんか先生とヤナギさん以外見たこともない人たちがわらわらと。あれっ!?女子もいる!

あ、それより越前くんは?あたしはコートのほうを向くと越前くんが先生に寄りかかってるのが見えた。周りにいた(たぶん立海の)人たちは眠っているだけだというからあたしは一安心した


「ところで、こいつは誰じゃ?」
「さあ?このテニスクラブに通っている生徒さんではないでしょうか」
「全然ちがいます」
「うわ喋った」

失礼なっ!この白髪の人あたしをなんだと思ってんだ!とりあえずこの人たちのことは置いておいて、あたしは越前くんのところへ駆け寄っていった

「越前くん、寝てるんですか?」
「ああ、お前か。どうやらそのようだ」

あたしは越前くんを支えてるヤナギさんにたずねた。よかった。足のほうは怪我して痛そうだけど、そのほかは異常ないみたい

すると、近くのほうからなにかピストルで打ち抜いたような音、あ、先生がじゃこさんを殴った音が聞こえた。え、先生、鬼ですか

「…ヤナギさん、なんで先生はじゃこさんを叩いたんですか」
「そういう掟だ」

うへーじゃこさんかわいそう〜…。でもなんで叩かれちゃったの?それは大会前に試合して相手選手をつぶさせようとしたから?見ている側なのに試合を止めようとしなかったから?


……それって全部あたしのせいじゃん!!

どうしよどうしよ!じゃこさん殴られ損だよ!あたしが試合を無理に続けちゃったから先生に殴られちゃったよ!

「じゃ、じゃこさん、すみません!」
「いいんだ、気にすんな。俺もこの試合は見届けたかったからさ」

な、なんていい人…!あたし今まで会ってきた人の中で一番優しいよこの人!普通ならてめーのせいだって言われて先生にあたしが殴られるとこだよ!それを…かばってくれるなんて愛子ちゃんは涙が止まりません

先生は赤也さんまで殴ってしまわれた。ああもうやめて。あたしのせいで犠牲者が2人も出てしまったあ!するとヤナギさんはあたしに越前くんを預けた。あたしの腕には越前くんが抱きかかえられ、当の本人は他の人たちと一緒に赤也さんのところに行ってしまった

…………え、ちょ、なにこれ。なにこれ!?あたし越前くんと抱き合ってる感じなんですけどこれええ!なにこれ!ていうかか弱い女子に男子を抱えさせるなんてヤナギさん分かってやってる?これちゃんと把握した上でやってる?

ちょっと待ってー!はやく帰ってきてよヤナギさーん!あたし心臓ばくばく言ってんだけど!越前くんの吐息があたしの耳にかかってああああ



「…もしかして抱き合ってる?」
「え…」

するとあたしの元に駆け寄ってきた立海の人たちといた女の人が話しかけてきた


「違います!これ、ヤナギさんがあたしに預けたんです!」
「これって…。仲がいいんだね」
「え、いや、それほどでも…」

ってなに照れてんだあたし、この状況で。ていうかたぶんあたし顔真っ赤なんですけど。恥ずかしいんですけど


「えっと…この状態で申し訳ないんですが、マネージャーさんですか?」
「うん。そう。山本ミキ。よろしくね」
「あ、上原愛子です…」

ミキさん、かあ。絶対あたしより年上だよね。綺麗な人だあ…

「ミキ、帰るぜよ」
「先帰って。あたしやることあるから」

ようやくヤナギさんたちが帰ってきて、ミキさんは赤也さんのほうへ行ってしまった。ああ。立海にはあんな綺麗なマネージャーさんがいるのか。うらやましい。

2010/12/16