青春を部活に捧げる | ナノ






「あ…」

赤也さんの目が赤くなってる。じゃこさんが言うには前にやった不動峰戦のときも赤也さんの目が赤くなってボールを体にぶつけるようになってしまったらしい

越前くんも、足ばかりを狙われてひざのあたりが赤くなっていたことに気づいた。このままじゃ越前くん、足が


「…不安なら止めてやってもいいんだぜ」
「え…?」

じゃこさんはあたしの握るフェンスを見て言ったらしい。いつのまにか強く握っていた。おかげであたしの指に赤く跡がついた


「もっとも、立海大附属の掟で俺は試合を止める義理はねーけど、この場合大会前だから止めてやらねえこともねえ」
「…………」
「どうする?」

越前くんは心配。ここで怪我でもしたら青学に支障が出てしまう。止めなきゃ。早く止めなきゃ、だけど



(あたしは全勝してる越前くんが好きだ)



ふと、前に越前くん家で仲直りしたときのことを思い出した。あのときからあたしの気持ちは変わってない。越前くんに、戦ってほしい。勝ってほしい


「試合は止めないで下さい」
「………いいのか」
「…あたし、越前くんが勝つって思ってるんで。負けないと確信してるんで」
「…3−0なのにか?」
「はい。それに、あたしなんかが止めたら越前くん、きっと怒ります。逃げるの嫌いみたいだし。ここで大人しく見てます」
「…大したやつだ」

だいじょうぶ、だいじょうぶ。越前くんは負けない。負けたらほんと、あたし立場なくなっちゃうんだからね!あたしじゃこさんに宣言しちゃったんだからね!勝ってくれなきゃあたしがちょっと困るんだけど!

もし負けたりでもして、足を故障でもしたらあたしが大石先輩にグラウンド一万周とか言われてテカメガネ先輩に乾汁めちゃくちゃ飲まされて桃ちゃんにダンクスマッシュ食らわされて不二先輩には散々悪口言われそうで…

とにかく、あたしの命が危ないからお願い!勝ってください!



「…お前自分のためかよ」
「え?あたしなんか喋りました?」
「ああ。思いっきりな」
「なんと!」

あ。そこはちゃんとヒロインみたいなことやってないとだめでした?あ、じゃあ今のなし!越前くん、負けないで!負けたらグラウンド1万周なんだからね☆あれ、ちがう!?


「ああもう!そんなとこで座ってないでちゃんとやれ馬鹿ー!」



「…なんだ、あれ」
「え?」

え、今のでよかったの?あたしがちゃんとやれ馬鹿ー!って言ったら、越前くんがなんか、えっと、外国人になってしまったんですけど…これってなに?


「ていうか、誰あれ」
「は?越前リョーマじゃないのか?」
「たしかに越前くんですけど…外国人じゃないですか?あ。そういえば越前くん帰国子女だ」

あーそっか。だから英語喋ってるんだ。へー。って、なんでだよ。今になって帰国子女時代に戻っちゃったの?なんで。なんで今


「だが、さっきとはまるで違う…。なんだ、どうしたんだあいつ」
「……あれですよ、外国人になったんですよ」
「そういうこと言ってんじゃねーよ」

でも、たしかに、越前くんが押し始めた。じゃこさんが言うにはプレイスタイルがめちゃめちゃだって言うけど…


「あれ、亜久津さんの打ち方だ!」
「亜久津?」
「…あ、あれは氷帝の人のだ」
「なに言ってんだお前?」

「だから、他の人の、ていうか今まで越前くんと戦った人の技をやってるんですよ」
「…なに?」

そうだ、あたし越前くんが試合したのほとんど見てるから覚えてる。つまり越前くんのメモリアル集じゃないか!



「……うそだろ。4−0から、這い上がってきやがった」
「…越前くんが」


越前くんが勝った

2010/12/13