青春を部活に捧げる | ナノ



「わ、わあっ、えーじ先輩影分身してるぅ!すごーい」
「………」
「不二先輩もすごいなあ、つばめ返し打っちゃったよ」
「………」

桃ちゃんたちの試合が終わってからというもの、えーじ先輩と不二先輩の試合を越前くんの間近で見ていて聞こえないはずはないのに彼に無視されつづけています。もう、ね。さっきからずっとこの状態。何話しても無視無視無視。とうとうゆーちゃん先輩が越前くんは集中してるんだからそっとしときなさいと諦めさせられた。あたしが離れていると桜乃ちゃんが越前くんに話しかけていて、越前くんも話していたからなんかかなりショックを受けた。なんで。なんでだろ。なんかさっきから胸のあたりがもやもやと…



「ちょっと、愛子、愛子!」
「え?」
「菊丸先輩と不二先輩の試合終わったよ?」
「あ。ほんとだ…。え、どっちが勝ったんですか?」

「愛子ちゃーん、見てくんなかったのー?俺の試合。俺3人に増えたんだよー?」
「あ。影分身は見ましたよ!ってことは勝ったんですか!?」
「うん。ちょっと危なかったけどね」
「あとはシングルス3だねん」

シングルス3…越前くん出るのかな。あ、葵くんがコートに出てる…ってことは次は葵くんの試合!?


「え、越前くん!」
「……………」

「お願いします!返事いらないからとにかく、葵くんだけには勝ってください!このとおり!ね、土下座してるからお願い!じゃないとあたし…」



「次は俺が試合だ」



…あれ?か、海堂先輩?え、次海堂先輩の試合なの?な、なーんだ…あたし早とちりしちゃって…。あああ、越前くんに謝る前に越前くん、海堂先輩にアップしてこいって言われて行っちゃったよ…。オーマイガー


「…海堂先輩」
「なんだ」
「……試合、がんばってください」
「ああ」

海堂先輩にエールを送ったあと、アップをしに行った越前くんの後を目で追いかけながらため息をついた


「愛子、今日元気ないね」
「いえ、あたしは元気ですよ…」
「テンションが元気じゃないから」

はあ。そりゃあねあんだけ無視され続ければさすがのあたしだって凹みますよ。ちょっとしたいじめに遭っている上原愛子ちゃんです。悲劇のヒロインです。ゆーちゃん先輩が女の子の日かと聞くまでは悲劇のヒロインでした


「うわ、見て愛子。あの人さっきまで負けてたのに、コードボール狙って点とりまくってるよ」

ゆーちゃん先輩があたしを励まそうとしてくれるのか、試合に目を向けさせてくれた。葵くん…本気で勝とうとしてる…。もしこの試合、葵くんが勝ってしまったらあたしは葵くんの彼女になってしまうんだろうか。そうなってしまったら越前くんはどう思うんだろうか。ああもうネガティブループの繰り返してストレスたまってきた


「…ずるい」
「え?」
「葵くんずるい!真面目にやれやー!」
「ちょ、愛子…」

「愛子ちゃん、走ってきなさい」
「げ」

2010/11/12