青春を部活に捧げる | ナノ



「…越前くんを起こしにきたんだけど」
「あっそ。それはありがとね」
「い、いいえいえ、どういたしまして…」
「このファンタもあんたの?」
「い、いえいえそれは桜乃ちゃんが」
「あっそ」
「あの…」
「なに?」

「離してもらえませんか、手」
「ああ、ごめん」
「………」


なんか、自分でやって恥ずかしくなってきた。越前くんなんて、なんかいつもと違う反応だからさ。しかもお礼言われちゃったよ。律儀に。ほんと、最近の越前くんはわからない

あたしはよくわからないまま越前くんと一緒に立ち上がり、そろそろ試合じゃないかと言って青学のみんながいるところに向かって歩いていった。あたしは越前くんにファンタは買わなかったのかと聞いたら変なおじいさんにボタン押されて取られちゃったんだってさ。ふんっ、泥棒なんかするからそういうことされるんだよ



「………」
「………ねえ」
「へっ…?」
「あんた、今日変じゃない?」
「え、あたし…?」

どちらかというと、越前くんのほうが変な気がするんだけど…。それに、あの日越前くんを押し倒してしまってから、越前くんの顔見る度にちょっと恥ずかしくなるんだよね…。キスしようとしてなんだけど…

「なんか、いつもと調子違うよね」
「そうかな…」
「…なんか、俺の試合終わってから、落ち込んでない?」
「え…っ?」

なっ………………越前くん、どうしたの…?ていうか、そんなにあたしのこと見てたの…?!う、うれしいような恥ずかしいような…!たしかに、おじさまに言われたくらいからちょっと落ち込んでたけど、まさかそんなに気にしてたなんて…

「なんかあったの?」
「………べ、つに、なんにもないよ?」
「……そ」
「うん……」

「…なにがあったか知らないけど、元気だせば?」

…………やっぱり、おかしいのは越前くんだよ。だけどあたしはなんだかうれしくなって、越前くんに笑ってみせた




そのとき、どこからか走ってくる音が聞こえて振り向いてみたら突然誰かとぶつかってしまった


「わっ、ごめんごめん!大丈夫?」

ぶつかった人はあたしたち(もちろん越前くん)よりものすごく高くて坊主頭の人。優しそうでしりもちをついたあたしに手を差し伸べてくれた


「あ、ありがとうございます…」
「君、可愛いね!」
「「……え?」」

…ちょっとおい待て。なんで越前くんも、え?って言ったんだ


「名前、何ていうの?」
「え、え…」

「…俺、先いくよ」
「あ、え、ちょっと…!」
「ねえ、名前は?」
「あーうーもう…上原愛子ですけど」
「愛子ちゃん!可愛い名前!僕、葵剣太郎です!よろしく!」
「あー…はい。よろしくお願いします」

この人…六角中の人だ。ユニフォームに六角中の文字が書かれているから分かったけど、それにしても大きい人だなあ…


「君、一年生?」
「え、あ。はい」
「偶然!僕も一年なんだ〜」
「えっそうなんですか!?…見えないですね」
「そうかな?ちょっと背は高いけどね。あ、敬語で話さなくてもいいよ!」
「あ………うん」

なんか、変に話しにくい人だなあ。というよりあたしよりおしゃべりな人だ…。かなり押されまくってる。んもう…越前くんは帰っちゃうし、あたしこれからどうしたらいいんだ…


「ねえねえ、彼氏とかいるの?」
「へっ!?あ、えーっと…」
「もしかしてさっきの人が彼氏?」
「…そ…そうそう!あの人!」

うそです。大嘘です。付き合ってません

「ふーん…あの人、越前リョーマだよね?」
「えっ、うん…」
「っていうことは、君は青学かあ…」
「そう…だけど…」



「じゃあさ僕が青学に勝ったら、越前くんと別れて、僕と付き合わない?」

「………えええええ!?」

2011/7/23