青春を部活に捧げる | ナノ




ぶちょーが言ってた、要ってなんだろうな。もしかして、頼れる人になるってことなのかな。よくわかんないけど悪い意味ではなさそうだ。でも、あたしってそんなにテニスをたのしんでいたかな。ていうか、ぶちょーはあたしを監視していたのかな



「あでっ!」

悶々と考えながら道を歩いていると急に額になにかが直撃して、思い切り空を見上げる形になった。なんだなんだ。頭がぐわんぐわんする。黄色いものが見えたと思えば、あたしの足元にはテニスボールが転がっていた

テニスボール…?なんでこんなところから。あたりを見回しているとまた、どこからともなくテニスボールが飛んできてあたしの体に命中



「いだあっ!」
「うるさい。あんた邪魔」

こんどは越前くんの声が聞こえたと思って声の聞こえたほうを見ると、木陰に越前くんがラケットを担ぐようにして持って立っていた


「越前くん、なにしてんの?ていうかあたしに恨みでもあるの?」
「ないこともないけど、当ててたのは落ち葉」
「ないこともないってなんだ」
「あんたが聞いてきたんじゃん」

サーブを落ち葉に当てるなんて、お暇なものですね〜。あたしは落ちたボールを拾って越前くんに投げ返した。見事にキャッチするかと思えばラケットでするりと受け止めた。おお、お上手お上手〜


「部長と、なんか話してた?」
「うん。なんかね、お前は青学の要になれる、って言われた」
「なにそれ」
「うーん、よくわかんない」

とにかくすごい人になるらしいから今のうちにサインしといたほうがいいかもよ、と言うと越前くんはいらないといつもと変わらない返事をした

またこれ、前と同じだ。あんなことがあった後もあたしは普通に越前くんと話してる。はあ、結局あたしは越前くんのこと好きじゃないのかなあ?

とりあえず邪魔だからと言われてしぶしぶ女子のコートに向かう


でもなんで越前くんはそんなことしてたんだろ?ぶちょーの送り出しにも行かないらしいし。そういえば、ぶちょーがいなくなるってことはもう走らされることもないってことじゃん!らっきー!


「あ。愛子ちゃん」
「あ。大石先輩」

あれ?いつのまに呼び捨て?

「手塚にあいさつしたのかい?」
「はい。心なしか寂しそうでした」
「そうか」
「でもこれであたしが走らされることもないってことです!」

「じつは、手塚に君の世話を頼まれていてね」
「え?」
「ということで、さっそくグラウンド30周ね!」
「ええええ」

なんか大石先輩キャラ変わった?しかもぶちょーより厳しい

2010/9/26