青春を部活に捧げる | ナノ



「ぶちょー…桃ちゃんから聞きました」


あたしは放課後、部活のため女子の部室へ向かう途中、男子の部室の前にぶちょーを発見した。あたしはぶちょーが九州に行くということを聞いていたから、お別れの挨拶にと立ち話を始めた


「九州に、行くんですね…。しょーこ先輩、には、ちゃんと言ったんですか…?」
「ああ。言った」
「泣いてませんでしたか…?」
「ああ。泣いていなかったな」

あ。ぶちょー、心なしか寂しそう


「あたしは…悲しいです。今までぶちょーにテニスを教えてもらっていましたかし…グラウンド10周って言われる声がないとあたし寂しいです」
「上原…」
「ぶちょー…」



「土産は買わないからな」
「なんでわかったんですかー!」

なんでなんで!?この流れからお土産よろしくお願いしますって言ったら絶対買ってきてくれそうだと思ったのに!なんであたしの演技がばれたんだ!かなり完璧に進んでいたはず

「お前がそんなことを言うときは必ずなにか裏があるからと、山田から聞かされた」
「しょーこ先輩、なんて情報を…」







「上原」
「なんですか?」

「テニスは、たのしいか?」
「へ?」

ぶちょーはいつになくあたしに真剣な顔で問う。あたしがぽかんとした顔をしている間、男テニの何人かがぶちょーに挨拶をして通り過ぎていくのが見えた。そういえば男子は練習が始まっていたんだ


「それ、越前くんにも前に言われました」
「……」
「テニスは、たのしいです。やることも、見ることも」
「そのことを忘れるな」
「…はい」
「お前は、青学の要になれる」
「えっ?」

ぶちょーから意外な言葉がもれ、あたしは目を見開かずにはいられなかった。要…?越前くんが柱ならあたしは要ですか

「それって、ぶちょーの代わりになれるってことですか!?」
「それは大石がやる。というか大体部が違う」
「そうですよね〜」




「お前のテニスを見る限り、常にたのしんでいるように見える」
「そうですか?」
「テニスのきっかけはその楽しさから始まることが多い。お前はテニスにおいて常に初心を忘れていないということだ。その心を、どんな状況においても忘れなければ、お前は本当に必要とされる人間になるだろう」

ぶちょーは話を言い終わるとテニスコートに歩んでいった。入り口の扉を開けた瞬間、周りにいた人たちはみんなぶちょーに頭を下げている。あたしは、男子のテニスコートを後にして女子のテニスコートへと向かっていった


2010/9/26