青春を部活に捧げる | ナノ



「さーて、あたしはこれで退散するとしますか」
「ファンタ」
「おつかれさまっしたー」
「ファンタ」

越前くんは汗だくの手であたしの手をがっしりつかんだ。うわ、手がぬれまくってるんだけど!ちょ、うれしいようでごめんけど気持ち悪い!


「あたしは!越前くんが勝つことは予測していました。よってファンタはなしです!」
「約束ちがうじゃん。ファンタ」

くっ、手がほどけない!汗だくでぬるぬるして滑りやすいはずなのに、越前くんの握力が強すぎて抜け出すことも出来ない。はなせー!

「ファンタファンタってファンタしか頭にないのかきみは!あたしの残額知ってる?あと127円しかないんだよ!?あたしのおこづかいのことも考えてよ!」
「127円なら120円で丁度買えるじゃん」
「あたしに7円だけ残すつもりか!」
「ほら行くよ」

いーやーだー!あたしは越前くんに手を引かれながら地獄の自動販売機に向かっていった。どうしよう。7円でなにしろっていうんだ!家にも帰れないんじゃない?これ。あたしの家ここからかなりの距離があるからバスで帰らないといけないんだけど、それも踏まえて考えてるのかな越前くんは



「毎度」
「………」

容赦なく越前くんはあたしの120円をかっさらっていって7円だけを取り残しました。どうしよう、帰り道



「ていうか、さっき買ってきたファンタはどうしたの?」
「…振って開けてすべてあたしの顔にぶっかかった」
「ぶっ」
「うわ、きたな〜!」

ちょっと思い出し笑いして、と越前くんは袖口で口をふいた。後から爆笑している。くっそ。腹立つ。こいつ腹立つ


「ふん。まああれは越前くんのお金で買ったファンタだから、これでチャラだよね」
「あー、あれあんたのお金だから」

わっつ?わんもあぷりーず

「あんたの財布から出して買ってもらったから」
「なんてことしてくれるんだあんたー!」
「いいところに財布があったから貸してもらった」

ど、どろぼう!ここにどろぼうがいます!誰か手錠持ってきてこいつの両手首につけて逮捕してくれー!

どこまで最悪なんだ越前くんは!あたしは頭に血が上りすぎたのか、それとも太陽の暑さで頭がおかしくなったのかファンタをぐびぐび飲んでいる越前くんをどついてしまった


「なっ」


越前くんにつっこんだあたしはバランスを崩して越前くんとともに倒れこんでしまい、そのとき越前くんが持っていたファンタは手から離れてからんからん、と音を立てながら転がっていったのが見えた


「…いったた…」
「…ねえ」
「は?」
「重いんだけど。どいてくんない?」

気づいたらあたしは越前くんの上に乗っかっていて、彼の胸板に頭を置いていたから頭上から声が聞こえた


「う、わ!ごめん!」


あたしは上体を起こそうとすると越前くんの顔が間近にあったからすぐさまそこから離れた。び、びっくりした…!越前くんがそんなによろけるとは思ってなかったから…どついても大丈夫かなって思ったんだけど


「ったく、なんでどついてくんの」
「ご、ごめん。つい…」

つい、でそこまでやる?、と文句を履き捨てられ、越前くんは服や腕についた砂を払っていた

「あ。ファンタ…」
「いいよ。あともうちょっとしかなかったし」

ファンタを捨てる越前くんにあたしはまたごめん、と謝った。もういいって、と言われてなぜか黙ってしまう。もしかして、怒ってる…?どうしよう。怒ってたら

そればかり考えてそこから先は口が開かなかった

2010/9/26