青春を部活に捧げる | ナノ



ファンタひとつであんなにがんばる子だとは思わなかったよあたしは


「リョーマくんすごい!」
「ドライブBをあんなにたくさん打ってるのに全然つかれてないよ!」
「とばしてんな〜あいつ」

みんな知ってる?あの子ファンタひとつであんなに燃えてるんだよ?鬱憤がたまってたとかぶちょーの試合見たから燃えたとかそんなんじゃなくて、ただ単にファンタが欲しいだけなんだよあの子はっ

そんなことを腹の中で笑いながら、あたしの腹は悲鳴をもあげていた。やばい。腹筋がやばいことになってる。なんか笑いすぎてなのかスクワットしすぎてなのか知らないけどヒクヒク言ってるんだけど。なにこれ発作?

今まで走ることしかされてなかったからなんか別の筋肉つかっちゃったんだろうな。なんてことさせてくれんだぶちょーめ!筋肉ムキムキになったらメガネ割ってやる



「みてみて〜越前くんと戦ってる人のポーズ〜」
「ちょ、上原静かにしろよ!」
「……」
「そこにいたら見えないよ!」
「……」


くすん。なにさ、そんなに越前くんの試合がたのしいわけ?あんなのおじさまと戦ってるのと比べたらそんな大層なものでもないよ?あたしはいつも越前くんとおじさまの試合見てたからわかるんだよ。あの人が変なポーズ(古武術?)をしていようが越前くんはそんな動じないってわけだ



「珍しく静かじゃない。愛子。手塚の試合のときは涙流すほど感動してたのに」
「だって、越前くんですもん。どーせ勝ちますよ。そんなことよりあたしの財産のほうが気になるだけです」
「勝つってわかるならそんな賭けなんてしなきゃいいのに。馬鹿だねあんた」
「自分でも初めて気づきました」

しょーこ先輩もぶちょーの試合で冷静だったじゃないですか。それと変わりはありませんよ。案外真剣に試合を見ているんだなってあたしはいまさら気づいた。まあ、あたしがふざけても先輩たちが構ってくれないのもあるんだけどさ



「結局のところ、越前くんとは付き合ってないわけ?」
「…付き合ってません。それ、都大会終わったあたりからよく聞くんですけど、なんでですか?」
「いや、あたしはゆーちゃんとあんたが話してるとこを聞いただけだけど」
「あ、ああ。あれですか。まあ、あれです、その、あたしがおっしゃったとおりです」
「あ、そう」

てっきり越前くんと付き合ってるのかとおもった、って言われたけどほんとあの時は即効ふられちゃったんだよね。今思い出しただけでも胸がぐさぐさする



「しょーこ先輩は…ぶちょーといつから付き合っているんですか?」
「んー…中2の冬あたりかな」
「それって、しょーこ先輩からですか?」
「いや、手塚から」
「……は?」

え、まじで?まじでか?あの堅物ぶちょーが告白したんですか!なんで?どうして?あの人放っておいたら走らせることしかしなくなる人なのに!


「まあきっかけは、女子と男子の仲が悪かったからあたしたちが協力してテニス部の交流をはかろうって手塚に言われたんだけど、あたしはてっきり部長同士でいろいろイベント立ててやるのかと思って普通にしていたんだけど、後から聞いてみればそれが告白だったらしくてね」

……なぜそんな分かりづらい告白を。ぶちょーらしいと言えばそうだけど、なんの恋愛要素もないじゃないですか。ぶちょーにとっての付き合うは、部活中心なのか?


「最初はあたしも戸惑ったわ。告白じゃなかったもの。だけどそのあと、ちゃんと伝えてきてそこで手塚の気持ちを聞いた」

「で、付き合ったんですか?」
「最初は断った」
「えええ」
「でも、また告白された」
「はあああ!?」

だけど、だんだん手塚のいいところや悪いところが見えて、すべてをひっくるめて手塚を好きになった。としょーこ先輩は穏やかにそう言った

「あんたも、ふられたからってあきらめんじゃないわよ。手塚みたいに何度も告白したり、あたしみたいにやっぱり好きってこともあるんだから」

ぶちょーがそこまで神経が図太かったなんて衝撃的だった。あたしは越前くんが勝つ姿を見ながらはいと素直に首を縦に振った

2010/9/26