青春を部活に捧げる | ナノ



時が止まったみたいだ




みんなは一目散にコートへ降り、ぶちょーの元へと走った。さすがのしょーこ先輩もコートの近くまで走って降りて、身を乗り出していた

あたしは、動けなかった





「もう無理っすよ。部長」
「棄権しなさい、手塚くん」


いろんな人がぶちょーに棄権をせまってくるけど、ぶちょーは立ち上がって試合を続けると言った

あたしはようやく動けるようになり、周りの先輩の声にも振り向かずすたすたとコートに降りて、越前くんが座っているベンチにたどりついた。そのころにはぶちょーはもうコートに戻っていて、結局あたしはぶちょーに声をかけることができず仕舞い




「ぶちょーに、なんか言ってあげた?」
「俺に勝っといて負けんなって言った」
「………そっか」

越前くんに確認した後、彼は立ち上がってあたしの隣を通り過ぎようとしたとき


「部長の試合、ここで見れば?」

と、すれ違う瞬間に言ったので、あたしはうんと頷いてベンチに座った



先輩たちはなにも言わなかった。たぶん試合に夢中でベンチに目をやるひまがなかったんだと思うけど、むしろそれでいいと思った


また、時が止まったみたいに越前くんが帰ってくる前まで、ずっとぶちょーを見守っていた

ぶちょーの立場になっていろんなことを思考しながらも、自分のテニスと比較しながらマッチポイントが訪れるころには、涙が頬をつたっていた




2010/9/26