青春を部活に捧げる | ナノ




って、


「全然ピンピンしてるじゃないですか」
「そうだけど、この状況で他校と話してるあんたの心理がわかんない」

だって大丈夫そうじゃないですか。それはあくまで過去の話なんでしょう?きっと治ってますよ、ぶちょーの腕は


「えっ、立海の奴らと話してたのか?」
「はい。なんか仲良くなっちゃいました」

大石先輩はあたしの笑顔を見るなり、そうかとひとり苦笑いをしていた。え、なんで苦笑い?もしかして仲良くなっちゃいけない人たちだったとか…?なにそのお母さんみたいなの。「あの子と仲良くなっちゃだめよ、貧乏なんだから」みたいな感じ


「愛子ちゃんって、いろんな人を巻き込んでいくよね」
「あざーっす!」
「でもそれがときに欠点となることもあるけどね」

どういう意味ですか。誰か!あたしに翻訳を!不二先輩はたまによく分からないことを言う。でもまわりの先輩方はうんうん頷いているんですけど、なんで理解できてるんだこの人たち

たっく、みんなどういう目であたしを見ているんだか。いや、えろい意味じゃなくてね。客観的にどう見られてるのかなって






そんなことを考えて時間もそれなりに経ってるんだけど、この試合、1ポイント取るだけでも長いな…

「正々堂々と戦え!」

あ、あれ荒い先輩だ…。どうしたんだろう、あんなに声を張り上げて


「…不二先輩、どうなってるんですか?」
「ああ、跡部は手塚にわざと長時間プレイさせて腕をつぶそうとしてるんだ」
「え……っ」

あたしはその言葉を聞いた瞬間、しょーこ先輩のほうを見た。しょーこ先輩は静かに試合を見ていて、微動だにしなかった。不安なはずなのに、顔色一つ変えてない



「ぶちょー!がんばれ!負けるな!ど派手な大将なんかやっつけちまえ!」
「静かにしろ」

休憩しているぶちょーにエールを送ったのにうるさいといわれてしまった。失礼な!せっかく応援してあげてるのに!越前くんなんてベンチコーチでもなんにもアドバイスしてないじゃん!向こうのスーツの先生はかなりアドバイスしてるよ!

「べつに。なにも言うことないし」

なんて先輩思いじゃないんだ。この生意気ルーキーは



「ほら!しょーこ先輩も声かけてあげなくていいんですか?ぶちょー行っちゃいますよ?」
「いいのよ、あんたの応援で手塚うれしそうだから」
「適当なこと言ってません?どっちかっていうと余計なこと言うなって機嫌悪そうなんですけど」

ていうか、この人たちクールだなあ。青学のクール率は高い。しかもよりによってクール×クールのカップルができただなんて最強すぎる。しょーこ先輩は無表情で文句いうなとあたしの頬をつねった







「ぶちょーは、どうしてこんなに強いんでしょうか?」
「そりゃあ経験の差でしょ」
「力もそうですけど、心の強さです」

あたしがもし怪我をしたなら、怪我をしているということを理由に負けを認めちゃうかもしれない。あたしがもしぶちょーの立場なら、こんなに一生懸命になれないかもしれない



あたしは、ぶちょーが肩をおさえてしゃがみ込んでいるとき、そう思った

「ぶちょー…」

2010/9/26