青春を部活に捧げる | ナノ




「ねえさ〜愛子ちゃんどうしちゃったわけ〜?」
「さあ?よくわかんないっすね」
「芝生に…うずくまっているな」
「今は試合に集中しろ」



なんだったんだ。いまのずっきゅんは。まさか、ほんとうに越前くんのこと好きになっちゃったわけ?いやいやいやいや、だってあんな「ハァーッハッハッハ」とかいきなり笑い出すあほみたいな越前くんを好きになるわけがない!なのに…


「越前のやつ、追いついてきたね」
「さっきよりずいぶん動きが良くなったな」
「かっこいい…」

「………え?」




はっ、いつのまにかたばこに追いついてるじゃん越前くん!ほんっと何者なんだろーねあの同級生は!?


「勇敢な男だよ、越前は」


…勇敢?タカ先輩は越前くんを勇敢っていうけど、あたしはただの負けず嫌いな同級生としか思ってないよ

だからマッチポイントもドロップボレー打ったんだし。どんだけ試合に凝ってるんだろうねこの子はっ


「越前!」
「あっ…」


…………………おおっと。いきなり立ち上がってしまった。越前くんは試合に勝った途端たばこに胸倉をつかまれてたからかあたしはあせって女の子になってしまった。いや、元から女の子ですけど女の子らしい反応してしまったってことです

まあ無事なにもされなくてよかったけど、い、いやよくなかったけどさ!なんなんだあたし!さっきから素直すぎじゃありませんか!?ぎゃああ気持ち悪いなあたし!


でも、ま。無事勝てて…









あたしに不法侵入されなくてほんとよかったね









「あ。タカさんの彼女だ」
「なんですとーーーーー!」


えっ!どこどこ!?タカ先輩の彼女!?あたしおやっさんにタカ先輩と結婚してこの店の看板娘になるねーって約束したのに!タカ先輩に彼女がいたなんて!

もうむしろ、タカ先輩にあたし以外の彼女がいることより、タカ先輩に彼女がいたことにショックだった。あたしには彼氏もいないのに…!

結局タカ先輩の彼女じゃなくてたばこのお母さんだったらしいけど、お母さん若いなあ〜!あんなお母さんがいてうらやましいよほんと!



「でもまさか愛子ちゃんが親父とそんなこと約束してたなんて思わなかったよ」
「寿司屋の看板娘としてがんばりたいんです」
「タカさんほんとに上原と結婚するんすか〜?」

「いや、愛子ちゃんには越前がいるから遠慮しとくよ」

いや、どういう意味ですか






「で、結局のところ越前とはどうなの?」
「だからさっきも散々言ったじゃないですか!なにもありませんて!」
「だってさっき越前見てかっこいい〜って言ってたよね?」
「あ。それ俺も聞いたー」
「俺もだ」


そんなこと言ったっけあたし!?覚えてないし!なんでそんな情報があるんですか!



「んもーおチビと愛子ちゃん付き合っちゃえばいいじゃん」
「はああっ!?なんでですか!」
「お似合いだと思うぜ〜上原」
「ちなみに越前と上原の相性はおおよそ88%だ」
「おおっ!結構高いじゃ〜ん」


付き合っちゃいなよ、っていろんな人があたしを取り囲んで言ってくる。ちょっ、まじでやめてくださいって!そんなこと言ったら…ほんとに





「なにやってんのあんた」

え、越前くん…


2010/9/26