青春を部活に捧げる | ナノ





「で、あんたなにしに来たわけ?」
「…えーと、観察です」
「あっそ」
「う、うそ!越前くんの試合を見に…」
「なにそれ」


越前くんはようやく家から出てくるとすたすたと服はユニフォームに変わっててあたしに見向きもせずにテニスコートに歩いていった。あたしも越前くんについていって、いつもは遠くから見てるテニスコートもすごく近くで見ることになった


「…あたし、ここで越前くんの試合ずっと見てて、越前くんはここで毎日負けてるんだってわかった」
「……」
「あのときは、ごめんなさい」
「…上原」
「へっ?」



「テニス、しよう」


越前くんは急に止まったかと思ったらあたしにサムライなんじろうのラケットを渡してくれた









「おーい青少年、今日は……お?」



「あんた、いつからあそこにいたの?」
「えっと、二週間くらいまえ!」
「あんたストーカー?それとも追っかけ?」
「ちがいます!ぶちょーに教えてもらったの!ここで越前くんが、毎日負けてるって」
「俺の負けるとこ見て楽しいわけ?」
「そりゃあ!大会じゃ全勝してる越前くんが、全敗してるの見るの楽しいよ!でも!」


さすがにしゃべりながらラリーするのはちょっと大変だったけどなんとか続いてた。あたしたちの左側には夕日が落ちかかってる




「あたしはやっぱ!全勝して調子乗ってる、越前くんのほうが好きだ!」
「!」


ぱこん、とあたしが打った音がして越前くんの後ろにボールが転がった。越前くんに初めてエースを取った。越前くんにエースが取れるなんて思ってもなかったから、あたしは一人ばんざいをして喜んでた



「……青春だねぇ〜」

2010/9/25