青春を部活に捧げる | ナノ







それからあたしは部活が終わって放課後、かならず越前くんとサムライなんじろうさんが試合をするところを影から見ることが習慣になった

越前くんは毎日負け、試合が終わっても毎日自主練をしていた

あたしも部活だけじゃなくて夜ご飯の前に毎日家の周りを走ることにした。だけどそれはどうしても三日坊主になってしまっていた


走ることはやめてしまっても越前くんの試合を見るのはやめられなかった



「………」
「………」


学校では相変わらず越前くんとはなにも話さないまんま、通り過ぎる日々が続いていた。ついこの前まで当たり前に話していた日々がうそだったように。いや、たしかにあたしが一方的に話しかけてただけなんだけどね

でもあたしは影から越前くんを見てるだけなのはどうしても嫌だった。













「なにしてんの」
「ふぬあああああっ」


今日は部活が無くってひまだったから早めに越前くんの寺の前でしゃがみ込んで見ていると後ろからいきなり越前くんがあらわれた



「え、えーっと…………座禅?」
「ふーん」


適当に答えたけど越前くんは苦笑いするあたしの前を通り過ぎ、いつものテニスコートじゃなくって違う場所に向かっていた


「えっ、テニスコートに行かないの!?」
「は?家に帰るだけだし」
「………家!?」


え、これ……家!?そういえばぶちょーが言ってたっけ。テニスコートしか見てないから家の存在わすれてたよ

あたしは越前くんの歩く後ろをついていくと、本当に玄関があった。初めて見る越前くんの家の玄関にあたしはすこし感動してしまった

越前くんはただいまーと玄関の扉を開けてあたしもつられて入ろうとしたけどぎりぎりのところで閉められてしまった



「………」

「リョーマさん、今だれかいなかった?」
「いいや。誰も」

「………リョーマさん」


あたしのつぶやきが玄関の前で響いた

2010/9/25