「あの、ぶちょー」 「………」 「ぶちょー」 「………」 (無視すんなこら!) ぶちょーにあっけなくも無視されながらあたしはぶちょーの後ろについて行っていた。放課後部活が終わったらついてこいって言われてついてきたけど、いったいどこに連れて行かれるのかわかんない …もしかして、もしかして!あたしが落ち込んでいるから俺がなぐさめてやるよ的なやらしいことをするのでは!?いやいやそれは!いやいやいや、ぶちょーになぐさめられても…いやいやいや でもぶちょーも優しいところもあるんだなって思った。ぶちょーになら、なぐさめられても…いいかなっ 「ここだ」 「……」 ぶちょーに連れて来られた場所は、ラブホでもぶちょーの家でもなく、 お寺 あの、ぼーんって音が聞こえるんですけど。なんかすごく風情がありますね。ふぜいって言葉を思い出すくらい古い寺なんですが え、ぶちょー。ここで座禅でもするんすか。やっぱり説教するためにここに連れてきたんですか、え? 「どうした、早く来い」 いろいろ聞きたいことはあったけどぶちょーには散々無視されてばっかだから聞くこともできなくておとなしくぶちょーについて行くことにした 「ぶちょー…」 「なんだ」 あ。ようやく聞いてくれた 「なにするんですか、こんなとこに連れて来て」 「あそこを見てみろ」 ぶちょーが指差した先にはなんでかテニスコートがあって、そこには見覚えのある人影と知らないおじさんがテニスをしてた 「…!えちぜふがっ」 「?」 「おいリョーマ、余所見してっとまた負けるぞ?」 「べつに。今日は負けない」 あたしは越前くんを見つけて思わず叫んだところぶちょーに手で口をふさがれてしまった 手っていうかもはやハンカチでふさがれたね。ぶちょーなにげにハンカチ持ってたんだ。清楚なっ! 「あまり大きな声を出すな」 「んんんんん…」 すみませんって言ったけどハンカチでふさがれてたから「ん」しか言えなかった。ていうか、なんでこんなとこに越前くんがいるんだろう?。それにあのおじさんはいったい誰? 「ここは越前の家だ」 「んふ!?んふ!?」 (訳;ここ!?家!?) 「黙って聞いていろ。越前と戦っているあの男はかの有名な越前南次郎だ」 (…だれ?) 「越前はいつも父のサムライ南次郎と毎日こうして試合をしている。ちなみに越前は今のところ全敗だ」 「…!」 越前くんが全敗?越前くんは毎日お父さんと戦って毎日負けていたなんて… あたしは越前くんに失礼なこと言っちゃった… お寺を出て行ったあと、ぶちょーがようやくあたしの口からハンカチを離した 「これでわかったか?人は生まれたときから強いなんてことはない。誰しも負けを経験し、悔しい思いを抱えながら強さを身につけていく」 あ。ぶちょーあたしのだ液がついたハンカチを汚そうに持ってる。持ってるっていうかむしろつまんでる。どんだけあたし汚いだ液もってんだ。そんなに汚くないよ 「ぶちょーも…負けたことあるんですか?」 「ああ。お前以上にな」 「………」 みんな、あたし以上に悔しい思いをして強くなっているんだ。そう考えてみればあたしは全然比べ物にならない… あたしも、負けてらんない 「ぶちょー、ありがとうございます」 「ああ。お前には十分先がある。チャンスを無駄にしないようにがんばれ」 「はい」 2010/9/25 |