青春を部活に捧げる | ナノ



「いやーほんと不二先輩かっこよかったなー」
「だよね!あの観月っていう人に0−5で負けてたのに7−5まで追いついて勝ったからね」
「すごいなあ、リョーマくんもすごかったし!」


堀尾とカチローとカツオが俺の周りに来て話すのはいつものことで、俺は教科書をそろえながらその話に耳を傾けてた


「そういや、女子テニス部はどうなったんだろう?」
「ああ、上原さんが試合に出るって張り切ってたよね」


上原…ああ、あいつか。都大会が準々決勝まで終わってその後あいつの姿を見てない。まあ、あいつうるさいから別にいいんだけど


「聞いたか?女テニは都大会の三回戦で負けたんだってよー。しかも上原の試合で」
「え、そうなの?」
「かわいそうだね…。たしか上原さんってリョーマくんと仲よかったよね?」
「べつに。あいつがつっかかってくるだけ」


俺にはなにも関係ないし、負けるのはあいつが弱いからじゃん

なんて思っていたとき


「あ。上原さんだ」


カツオが廊下側のほうを指さして俺も横目でちらっと見てみると、あいつはめずらしく肩を落として目線が床に向いたまま歩いていた


「げっ、なんだよ。もしかしてショックで落ち込んでんのか?」
「…みたいだね」
「そりゃあショックだよ。初試合であんな結果だったんだもん」


俺はもっと違う理由でショックなのかと思ってた。試合で負けてもあいつはへらへら笑ってどーせぶちょーに走らされたとか女テニの先輩に殴られたとか、そっちに嘆いてそうだった

だから自分には関係ないと思っていた俺だけど、いつのまにかあいつを引き止めていた



「あんた、試合負けたんだって?」
「…………」
「だから言ったじゃん。調子乗ってると痛い目見るって」
「…………」
「結局あんた、口だけだよね。練習してるとこなんてあまり見ないし、なにかあればぶちょーに走らされてるし」
「…………」


ちょうど誰もいない渡り廊下だったから俺の声は響いてあいつに聞こえてるはずなんだけど、上原はじっと止まったままなにも言わない

いつものあいつじゃなくて違和感があった



「…………よ」
「?なに、聞こえない」

「しかたないんだよ!あたしなんか初心者だし、初めて何ヶ月かしか経ってないのにいきなり都大会に出ろなんて、無理だったんだよ!」


上原が振り返ったとたん泣いていたから俺はそっちのほうに驚いて逆に息が詰まった


「越前くんにはわかんないんだよ。いっつも勝ってて負けたことがない越前くんにはあたしの気持ちなんてわかんないんですよ!試合に負けるってことがどんだけ悔しいか。どんだけ先輩たちに迷惑をかけるかなんて」


俺が、負ける気持ちがわからない?そんなことを聞いて俺は腹が立った。いつのまにかギャラリーも増えててめんどうなことになりそうだったけど構わずに言った



「…あんた言ってることめちゃくちゃ。自分が負けたこと経験がないことのせいにして、あんたがそれだけ練習してないのが悪いんじゃん」
「…っ」
「俺が負けてないからなに?あんたには関係ないじゃん」

「…越前くんのばか!大っ嫌い!」


上原はそういって走って逃げていった。なんだよあいつ…。わけわかんない。勝ってに怒って、勝手に泣いて

2012/4/22 編集