青春を部活に捧げる | ナノ




『そうなのよ〜、男子は女子と会場がちがうのよね。あたしも風邪なんてひかなかったら都大会さぼって男子のテニス見に行きたいのに!ごほごほっ』

「ゆーちゃん先輩。電話切りますよ?」

『やめて。まだ切らないで!あたしインフルエンザで隔離されて親の顔もまともに見てないんだから超さびしいの!』

「あーそうですね!それではまた!」
『まってええええ!』


ゆーちゃん先輩と話してるとどっちが先輩なのか分かんない。でもゆーちゃん先輩は唯一恋バナができるのがあたしだけらしく、こうやって毎晩電話しては桃ちゃんはどうだった?とか聞くんです


『いいよね愛子はいろんな男子と話せて』
「先輩も話せばいいじゃないですか!」
『無理よ。男女の仲はあれだし、それに男子と話す自信がないの』
「そんなことないですよ。桃ちゃんも優しくて面白いですし、きっとすぐに打ち解けますって」
『そう?…がんばってみようかな』
「その調子です!!」


ああ、これが青春ってもんだよね!毎日テニスだけじゃ物足りないと思ってたんだよ。こういう恋愛関係のことがあっての青春をあたしは望んでたんだよ!

あたしの生活といえばテニスしたり越前くんにバカにされたりテニスしたりしょーこ先輩に怒鳴られたりぶちょーに走らされたり

んもーろくな青春じゃない!



『そういえば愛子、あたしの代わりに都大会出るんだって?』
「はい…すんません。せっかくの大会なのに…」

『いいって。それに、愛子ならきっと勝てるよ。応援してる』
「ありがとうございます!では、ご飯の時間なんで切りますね」

『うん。大会がんばってよ』
「はい!失礼しまーす」


ゆーちゃん先輩は最後にじゃあね、と言ってその声を聞いたと同時に携帯の電源ボタンを押した

そのあとあたしは普通にご飯たべてふつうにテレビ見てぎゃははと笑ってふっつうにお風呂に入った


普通なんだけど、どこかあたしには特別に過ごせたような気がする








「でもなああああっ!無理なもんは無理ー!」


一年生のあたしがそんな大舞台で出れるなんて夢のまた夢!それにあたしはそんなにテニス暦もないし全く自信がない

…ああ、素振りのひとつやふたつはやっとこうかな。でも前に鏡割って母さんにめちゃくちゃ怒られたからなあ

外で練習してこよう






「あ」


外へ出てみると海堂先輩が走っているのが見えた


「海堂先輩!」
「…!てめーなにやってんだ」


あたしは海堂先輩を追いかけて同じペースで走ることにした。なるほど、こうやってランニングするのも練習になるよね!


「海堂先輩こそ、こんな夜遅くにランニングってすごいですね」
「あ?いいからお前帰れ」
「あ。もしかしてあたしのこと心配してくれてんですか!?いやん海堂先輩 や さ し い 」
(きもい…)


いやあ、海堂先輩のペースについていけるなんてあたしも成長したなあ〜!それに海堂先輩はどこかのルーキーと違って優しいし、あたしを家まで送ってくれたんですよ!どっかのルーキーと違ってね!!


2010/9/25