青春を部活に捧げる | ナノ



「女子テニス部入部希望です」
「そうか。テニスか。うちは男子のほうが強いが、まあがんばれよ」
「はい」

とかなんとか先生との会話を済まし失礼しますと礼をすると、あたしは職員室を出て靴箱へと向かった


「え?なにテニス部?あんたテニスやってたの?」
「いーや全然!初心者。はーちゃんも見に行かない?」
「あたし用事あるからやめとく」
「そっかーじゃあね」

実際、テニスはやったことない。お姉ちゃんがテニスしてるの見て楽しそうだなぁと思った、ただそれだけ。お姉ちゃんはテニスがすごく上手くて、去年までこの青学で女テニのキャプテンやってたみたい。そんなお姉ちゃんに憧れてテニス部に入ろうと思ったのがきっかけ

でもあたしの本当の理由はそんなんじゃあなかった





「…なんだこれ」


靴箱にぽつんと置いてあったかばんを見つけた。名前がちょこんと書いてあって見てみた


「りょま…E?」

りょまって人がいるのか…。なんて変な名前。かわいそうに、中学生時代でいじめられないといいね。あたしはかばんを置いて先に行こうとした




だけど、なにか気になってしまい、気づくとかばんの中をあさっていた


「あれ…テニスラケット?」

てことはもしかしてテニス部の人!?うわーラッキー!あとでテニス部に案内してもらお。それにしても変な趣味してるテニス部の人だなあ…。出てくるのは変な動物の写真とか…あ。煎餅入ってる。おじいさんみたいな好みの人だな〜この人




「あんた、人のかばんでなにやってんの」
「………………」

しまった。すっかりかばんあさるのに夢中で人がいるの気づかなかった。まずい。これはまずい。はたから見たらただの変な女だ!だってただあさるだけならまだしも、かばんの中から見つけた煎餅を食べてしまっているのだからもう変人確定だ


「なに…人の煎餅食べてんの」
「え、えーっとですね…取調べ?」
「ふざけてんの?」

それはそうだ。ど、どうしよう。なんて言い訳したらいいんだ?


「それ、俺のかばんだから早く返してくんない?」
「え、そうなの!?」

しかもよりにもよって本人のだったよ…!だから怒ってんのかこの人


「え、えっと…あさってすんません。つい、煎餅がおいしそうに見えちゃって…」
「言い訳はいいからさっさと返してくんない?」

「あ、ちょっと待ってください」
「なに」

この人がテニス部の人ならテニスコートの場所教えてもらおう。かれこれ一時間くらい迷ってんだよね。ここの学校広すぎて困っちゃってさ


「やだ」
「ちょ、まだなんも言ってないよ!」
「普通に独り言言ってる時点で駄々漏れなんだけど。あんた馬鹿?」
「ちょ、待って!謝ります!煎餅食べたの謝りますから、お願いだからテニスコートまで案内してー!」
「理不尽にもほどがあるでしょ」

なんて冷たい人なんだこの人!!人がこんなに必死にお願いしてるのに!もういいや!いやでもこの人に付いていってやる!そう思ってストーキングしてたらこの人はいきなり走りだしたからあたしも全速力で追いかけた


「なんで走るのー!」
「うっとおしいから!」
「じゃあテニスコートまで案内しろー!」
「しつこい!」


2010/9/25