青春を部活に捧げる | ナノ



やっぱり準決勝となると会場もすごいことになるんですねー…。ここ前に金ちゃんと走ってきたとこだ。それにしても、今回は四天宝寺とベンチが近いなあ…今までに比べると話しかけにいきやすいな

「…あんたまた敵陣に行くつもりでしょ」
「えっ!?いっいやそんなことないよ!?さすがに準決勝ともなれば、ちょっと自重しないとなって思うし…」
「明らかに目線は向こうむいてたけどね」

越前くんは敵陣のほうを指差した。ちっばれてたか。
というか!それより今は不二先輩の試合だよ!あの毒手の白石さん、あの不二先輩相手にめちゃめちゃ点とってんだけど…!やっぱ部長だけあって強敵なんだ……でも不二先輩が押されてるなんて…。

…………でもあのセリフはいったい……。いや気にしないことにしよう

でも白石さんって、すごく爽やかに見えてテニスしてるときはちょっと、怖く感じるなあ…。なんだろう、ぶちょーとはまた違う、感じがする。不二先輩と試合するのも怖いなあと思ってたけど、白石さんと試合するほうが怖いかも…

「へえ、じゃあ俺のテニスってどんなの?」
「越前くんの?越前くんは徹底的に負かすテニスでしょ」
「…それより白石さんのほうが怖いの?」
「越前くんは楽しそうにテニスするから、怖くはないよ。でも白石さんのは…なんかちがうんだよねー」
「…ふーん」

越前くんとそんな話をしながら、不二先輩の試合はついにあと二球で負けてしまうところまで来てしまった……。不二先輩が負けちゃうなんて、想像したくないけど、あたしはベンチで見ることしかできない。そのとき、不二先輩はボールに追いつけず、倒れてしまった。越前くんのときと、一緒。あたしは体が固まってしまって、動くことができなかった。手すりを持つ手だけが力を増していくばかり。あたしは不意に越前くんの方を見ると

「本気でやってよ」

………………………………あれ?隣にいたはずの越前くんが、いつのまにやらコートの中に。なにやってんのあの人!!??先輩に言うセリフじゃないよ!あんなの!あたしが言ったら一発でたたかれますよ!?まあ越前くんは今桃ちゃんたちにたたかれてるけど、当の不二先輩はなんか吹っ切れた感じで笑ってらっしゃる…優しいなあ不二先輩。

「なにやってんの越前くん馬鹿なの」
「あんたほどじゃないし」
「怒るよ」

怖くないしと言われた。知らないよ?あたし本気で怒ったらとんでも怖いかもしれないよ?

2012/05/15