青春を部活に捧げる | ナノ



「あの、これ…よかったらみなさんで食べてください」

桜乃ちゃんは、女子だ。これは誰もが認めることであろう。なんていうかね、桜乃ちゃんには女の子らしさというのがにじみ出ててる。そんな桜乃ちゃんがつくってきたおにぎりを勢いよく食べようと男たちは群がる。そしてあたしもその中に入っておにぎりを争奪する。まるで男子だ、あたし

「ったくよ、お前も毎回試合見に来るなら差し入れくらい持ってこいよ」
「なっ、女子力ないって言いたいんですか!」
「愛子ちゃんはないよね〜」
「英二先輩まで!!!」
「上原の女子力のある確率10%」
「だまれああああああ」
「ちょ、おま汚ねえ!ごはん粒ちらすな!」

そんなことを言いながらバクバクとおにぎりをたいらげて、ついには手持ちの二つしかなくなってしまった。

「愛子ちゃん愛子ちゃん」
「?なんですか英二先輩」
「ちょっとこっちきて、おもしろいもん見られるよ!」

急に英二先輩に引き連れられて来てみると、桃ちゃんと乾先輩が木の陰でなにかを見ていた。その先にはさっきから姿を消していた越前くんがいた。それに、桜乃ちゃんもいる。越前くんと桜乃ちゃんのやり取りを見てた先輩たちは、越前くんに聞こえないようにバカだとか恋愛成就率は0%だとか言ってる。

よく見ると、桜乃ちゃんは別のおにぎりも作ってたみたいで、越前くんに渡そうとしていた。あたしはその光景をおにぎりを頬張りながら見つめていた。越前くんって、ほんとなびかないよなあ。前に寿葉さんが来た時も動じてなかったし。あんな可愛い桜乃ちゃんでさえ、無表情なんだもん。越前くん、謎

すると、桜乃ちゃんの真上から、赤い髪の男の子が落ちてきた。と思えば、金ちゃんだった。金ちゃんは器用に桜乃ちゃんが落としたおにぎりと箱をキャッチしていた。金ちゃんすごい…。まあそこから偶然泥棒さんがあらわれて、越前くんと金ちゃんに撃退されたんだけど、金ちゃんのパワーはやっぱりケタ違いで、植込みを突き破って泥棒さんに当たった

「めっちゃウマいで!」

はー、金ちゃんはどこぞの冷徹男子よりも素直でかわいいなー。たぶん越前くんと金ちゃんを足して割ったらかなりバランス良いと思う。世の中うまくできてない

「あっ乾先輩たち!」

まーさっきの泥棒さんの件で、このテニス馬鹿な人たちがよっしゃーと興奮するもんだから、あたしたちが隠れてるのがばれちゃったわけで。

「あんたもいたの」
「え、ええまあ〜」
「覗きとか、ヘンタイだよね」
「なにー!?」

2012/03/07