青春を部活に捧げる | ナノ




ここに戻ってきたときから、張り詰める空気が違うと感じた。みんなの様子がおかしい。樺地さんとここに戻るまで結構時間が経って、もう終わってしまったかと思いひやひやしてたんだけど、試合はまだ終わってないみたいで安心した。だけど、この空気は一体なんだ…

「あの、荒い先輩…試合いったいどうなって…」
「お前いい加減表記どうにかしろ。てか、いまそれどころじゃねーんだよ…」

この静けさの中、あたしは人ごみをかきわけコートの近くまで来たら、その原因のすべてが把握できた




…越前くんが倒れている

越前くんだけでなく、大将も倒れている。どちらかが先に試合を続行しないと負けてしまうらしい。背筋が凍ったような感覚。これ…前にもあったけど…こんどは今までと違う。越前くんが全然起き上がらない。みんなは越前くんに必死に声をかけていた。それでも越前くんはぴくりとも動かない。こんな越前くん見たの初めてだ…。どうしたらいい、あたしどうしたらいいんだ。声を出そうにも、なんて声をかけたらいいのかわからない。ただ、握っているバリカンを締め付けるだけ。そう、ただ言えるのは…



なんであんな体勢なんだ…………。

越前くん、右足がとんでもない方向に足を上げたまま倒れていた。いったいどんな体勢して打って倒れちゃったんだ。あの脚は一体…。だめだ、驚きを通り越しておかしくなってる気がする。ああ、今すぐにでもあの脚を気を付けの姿勢に戻してあげたい…!

そのとき、大将が先に立ち上がった。コートは氷帝コールでいっぱいになった。青学も負けじと声を張り上げるが、越前くんは一向に動かない。いや、でもあんな体勢になってたら、違和感感じてすぐにでも起きるよね…?

だけど、越前くんは、大将が立ち上がったのに全然立ち上がらない。このままだったら、本当に、負けてしまう…

「………………」

声が、出ない

2012/02/07