青春を部活に捧げる | ナノ



「はああ!?本気で言ってんのそれ!?」

証明落下のため、ただいま撤去作業に取り掛かっています。この時間を使って、タイムをとることになって、今は一時休戦中なのです。そんなとき越前くんに呼ばれたあたしは、とんでもないことを耳にするのです

「なんであたしがバリカン買ってこなきゃいけないんだ!」

そう、あれだけ坊主宣言する割に、肝心のバリカンがないと言いだして、それをなんと病人のあたしに買ってこいと命令しやがったのです。あの、声は出ましたけど、まだちょっとふらついていますからね?そこんとこちゃんとわかってます??

「俺だって、疲れてんだけど」
「あたしだって疲れてる!!」
「あ。そうだ。帽子預かっててくれる?」
「……」
「ね、お願い」
「………………………………………………………………………………ああもう!しょうがないな!」
((あ、折れた))
「買ってくるから夏休みの宿題やってよね!?」
((終わってないのかよ))
「えー……まあいいけど」
「あと!」

あたしは越前くんに向かって、さっき枯らした声を気にしながら、言ってやった

「絶対勝ってよ?」
「…………当然」

そして、あたしはテニスコートを後にして、近くにある電気屋さんへと向かうのだった

















ていうか、お金はあたしの自腹なんですか!?

しまった…!あまりの衝撃的なおつかいのせいで、お金のことすっかり忘れてた…!どうしよう、今から戻って買ってきても試合終わってるかもしれないし…!ここまで走ってくるのはちょっと体力がいるし…。そうだ、ここはぶちょーに電話して聞いてみよう

『金は貸さんぞ』

ちくしょー!!!なにすべてを察したって態度なんだ…!いや図星だけどさ!ちょっとお願いしますよぶちょー。あたしお金ないんですってば、バリカンどころかバス代も危ういんですが。大石先輩!あたしどうしたらいいんですか!

『ていうか、電話かけてこないでくれるかな?越前の試合に集中したいから』

大石先輩ひどいー!!あたしだって越前くんの試合見たいんだけど!!ったくもー!なんであたしこんなとこに来ちゃったかなー……。なんで越前くんの頼みを聞いちゃったかなー…



「ウス」

……あれ…?樺地さん…?え。なんでこの人がここにいるの?樺地さんはあたしが手に持っている2600円のバリカンをじっと睨みつけていて怖かったけど、なんとなく樺地さんが言いたいことが分かった気がする

「…もしかして、バリカン買いに来ました?」
「ウス」

つ、通じたー…!あ、もしかして、あの大将に命令されておつかいに来てるんだ!ということはあたしと一緒…!同じ境遇を抱えているって思うと、なんだか急に親近感を感じる…!

「あたしも越前くんに言われて買いに来たんです。でも…ちょっとお金が足らなくて…」
「………………………………」
「それで、その…樺地さんがお買いになさるのでしたら、私の分はいらないですよねーあははは」
「………………………………」

………………………怖いよー!!やっぱり怖いよー…!なんだかあたしとしては珍しい丁寧な敬語を使うほど、この人の前ではむやみに逆らえない気がする。だってなんかめっちゃ睨んでるもん!めっちゃバリカン睨んでるもん…!

「ウス」

すると、樺地さんはあたしの持っているバリカンを貸してくれというように手を出してきた。あたしはとりあえず樺地さんにバリカンを預けた。そして樺地さんは迷うことなくレジへと持っていくと、会計を済ませた後にあたしの手元へと返した

「…………え…?」
「お金は………いりません。………会場に、戻りましょう」
「あ、はい………」



なんだこの紳士はーーーー!?

2012/01/17