青春を部活に捧げる | ナノ



「ほんっと越前くんって負けず嫌いだよ………」


あれはそう、とある昼休みのことでした。
たまたま弁当を忘れたあたしは、食堂へ昼食を食べに行ったとき、たまたま越前くんとばったり出会ったのです。そのとき越前くんはエビフライ定食を食べていたんだけど、ちょうどあたしが買おうとしていたそれは、もう完売してた。だから越前くんにじゃんけんして勝ったらエビフライを一つ頂戴と言った。そしたら彼は「やだ」の一言で終わらせやがったので、あたしは越前くんの食べようとしていたエビフライをかっさらった。越前くんはさぞ悔しかったのか、未だにその時のことを引きずっている

「………それは負けず嫌いじゃなくて、単なる食べ物の恨みでしょ」
「意地張ってるだけなんですよ越前くんは…もう、子どもなんだから」
「いや、あんたのが子どもだからね。エビフライかっさらうて、幼稚園児か」

…たしかにあの時の行動は幼稚だったかもしれないですけど…だってお腹すきすぎてたんだもん!それをこれ見よがしにエビフライ食べる越前くんがうらやましくてうらやましくて…!つい…手が勝手に動いてしまって…!

「愛子ちゃん、どろぼうはだめだよ」

た…タカ先輩に言われたらおしまいだ……。


そう、そんなわけで、越前くんの負けず嫌いはここでも発揮していた。氷の世界で何度も動けなくなっても、ひたすら無我の境地で対抗し続けている

「そういえば無我の境地って、あたしにもできないんですか?」
「ああ。いまのところ85%の確率で無理だろうな」
「原因は」
「経験不足」
「初心者だって無我の境地くらいやってのけますよ。見ててください」

あたしは呼吸を整え、ラケットを構える形をとった

「氷の世界」
「よし、そのまま静かにしていろ」

ぶちょーに言われて、あたしは3分間だけ氷の世界を堪能した

2011/11/29