青春を部活に捧げる | ナノ



「……………」
「……………こんどはなに」

ラケットを取りに来た越前くんをあたしはくじけずにまだ同調しようとしていた。でも顔はしかめっ面になるばかりで、一向に越前くんに同調は伝わらない。次は越前くんの試合だ。しかも…相手は…。


「…あんた、調子はどうなの?」
「………………」
「具合悪いなら、帰ってもいいのに…」

そっ、それはやだ!!あたしは必死に首を横に振った。なんのために試合見に来たと思って……

「……なら、いいけど。ほんとに悪かったら、帰ってもいいから」

ほんと、今日の越前くんは今まで以上におかしい。なんでこんなに、優しいんだろう…。あたし、越前くんの彼女でもなんでもないのに。

越前くんはラケットを取り出すと、コートに向かうため立ち上がった。越前くんが行ってしまう。なにか、なにか言わなきゃ。そう思い、とっさに越前くんのジャージをつかんだ


「…なに?」

なにか、言わなきゃ。こういうとき、声かけてあげたいんだけど、声が出ない。仕方ない。もう口パクでいこう

(ポカリ、ありがとう)
「……………」
(しあい、がんばって)
「……………わかった」

そういうと、越前くんは決戦のコートへと向かっていった。



………………え、わかった?…………わかった!?今の通じたの?先輩たち誰一人理解しなかったのに………ええ!?

2011/11/20