青春を部活に捧げる | ナノ




「サーブだけ サーブだけ」

あたしもああ言われないようにサーブ以外の練習もがんばらなきゃ

越前くんにもらったポカリを飲んで少し眠ったら、さっきより体が楽になった気がした。もうタイブレークまでいってる。さっきのサーブの音は、あの人だったんだ。鳳さんというらしい



「愛子、あんた休んでなくて大丈夫なの?」
「はい。さっきよりは楽になったんで」

まだまだ熱っぽいけど…英二先輩と大石先輩の試合は久しぶりだから、見届けなきゃいけないと思った。得点は…6−3で氷帝リード。あと一球取られたら、英二先輩たちの負け…

「えーじせんぱい!大石せんぱい!がんばってくださげほっ!」
「愛子!無茶しなくていいって!」

思いっきり声上げたら思いのほか喉を傷めてしまった。完全風邪だ…。どうしよう、声出なくなった……ら

「………………」

あれ…?うそ……え、なんでまた…?え……










声が出なくなった…!!!!!!!?

(ぎゃああああなんでだああああ)
「愛子、どうしたの。頭かきみだして。ぼっさぼさよ」
「きっと熱がまた上がったんじゃ…。もう愛子、帰ったほうがいいよ」

なんてこった。またあのときの悪夢…声が出ない病…。どうしよう。今日はノートもなにも持ってきてない…。文字で伝えることができない。こうなったら、ジェスチャーで説明するしかない。あたしはゆーちゃん先輩の裾を引っ張った

「ん?なに?愛子」
あたし、声が、でなく、なったんです
「わたし、なにも、食べてない?お腹すいてんの?」
ちがああああああ

だめだ。あたし、ジェスチャー苦手なのかな…。文字もだめ、ジェスチャーもだめ。どうしたらこの感情をつたえることができるのだろうか…


「6−3 氷帝マッチポイント」

こんなときに…!あたしも英二先輩たちもピンチだよ…!でも、英二先輩も大石先輩も、粘って試合を続けてる…!あたしも早く声を取り戻さなきゃ…でもどうしたら…



「これは……」
「同調!!」

シンクロ…?シンクロナイズドスイミング…?なんでここで?

乾先輩の解説によると、相手の思考や行動とかが同調してお互いの動きがわかるんだってさ…へえ………













これだ!!!!!!!

あたしも同調すればいいんだよ!そしたらこうやってジェスチャーも文字も使わなくて済む!ありがとう黄金ペア!よし、これであたしも…!

………まてよ?いったい誰と同調すればいいんだ…?しょーこ先輩?ゆーちゃん先輩?それとも…越前くん?いや、なんで越前くんが出てくるんだろう。でも、しょーこ先輩たちは気づいてくれなさそう。ここは、向かい側に立っている越前くんにゆだねるしか…!気づけ!越前くん!

「………………なに」

気づいた!!あのね!越前くん!あたしね声が…

「なに鬼みたいな顔してんの。怖いんだけど」
「………………………………」

越前くんの 馬鹿!

この時、あたしも黄金ペアも敗れてしまいましたとさ


2011/11/13