青春を部活に捧げる | ナノ



「……愛子、ボールもってるよね?」
「え、なんで知ってるの?」
「いいからボール貸して」

不二先輩とタカ先輩の試合の最中、急に越前くんにボールを貸せと言われた。とりあえず、越前くんにあたしのお気に入りボールを渡すと、彼はそれをばちこーんとコートの中へぶちこみました

「ぶちこんじゃったじゃねーよ!なにしてくれてんの!あれお気に入りだったんだけど!」
「あ、そうなの?ごめん。でもどのボールも一緒でしょ」
「あたしのボール!」

悪気はなかったなんて、なんて良い言い訳があったもんだ。悪気あったでしょ!あのおっさんにボールをぶつけようという!

「ね、あとで取ってきてよ!?なんかいつのまにか向こうのベンチに落ちちゃってるし!」
「めんどい」
「めんどいじゃねーよ!ね、お願いだから取りに行ってよ一人じゃこわいあそこ」
「ファーイト」

腹立つ。ほんと腹立つ!桃ちゃんもなんとか言ってやってよ!

「お前、俺ボール二個持ってたから貸してやったのに」
「あ、そうなんすか」

もっと早く言えー!



「うおん…うおん…あたしのボールが…」
「そんなにあのボール大事だったの?」
「…はい。自分のお金で買った最後のボールなんです」
「他にないの?」
「…練習してたら全部ホームランしちゃって、みんな迷子なんです」
「…………」

試合を終えてきたタカ先輩に慰めてもらった。でもボールは戻ってこなかった。こうなったら、次の英二先輩に託すしかない!

「英二先輩!」
「英二ならもう行ったよ」
「えっうそ!?」

2011/3/9