青春を部活に捧げる | ナノ




「いやー間違えてしもたな!」
「そだね!でもこの階段上ったら会場だよ!」

どうやらあたしと金ちゃんは気が合うらしく、バスに乗れなくて走っていても会場を通り過ぎても話が途切れることなく笑っていた

「うわ、広ーい…」

会場は屋内で、周りを観客席で囲んでその中心にテニスコートが一面ほどあった。屋内の会場に来たことがなかったあたしは、その雰囲気に圧倒されてしまう。声も、今は屋根が閉じてる所為か金ちゃんの声がよく響いた

「あ、誰か来とるで!おーい!」

会場に気を取られて、あたしたちの真正面に人がいるのに気づかなかった。金ちゃんはその人にぴょんぴょんと飛んで挨拶してるけど、相手のほうはなんの反応もしない。金ちゃんには暗い奴だと判断されたみたい。だけど、それは暗いんじゃなくて馬鹿にしてるんだと思うよ金ちゃん。だってそれは…

越前くんですから

「…やば…」
「ん?どないしたん愛子?」

「おーい金太郎〜」

するとあたしたちの後ろからぞろぞろと学生服を着た人たちが現れた。どうやら金ちゃんと知り合いみたい

「おっ、なんや金ちゃん。女の子つれてデートでもしとったんか?」
「ちゃうちゃう。この子はさっき知り合った愛子や」
「えっと…どうも」

「それより、あの子謙也くんのゆうとった子ちゃいます?」

坊主でメガネをかけている人は越前くんを指差して後ろの人にたずねていた。この人たち越前くんのことを知ってるの?なんか三白眼で睨んで唯我独尊でものごっつい?まあ越前くんっちゃ越前くんですが

「なんで越前くんを知ってるんですか?」
「もしかして、コシマエと知り合いなんか?」
「うん。同じ学校だけど…」

コシマエっていうところはあえて触れないでおこう

「あ、もしかしてこの子噂の女の子やないの?」
「噂?」

なんだなんだ?あたしも噂されてたのか?ていうか大阪までそんな噂が立っていたなんて恥ずかしすぎるんですが

「たしか、会場をいっつも走っとる子やろ?」

えーあたしそんなイメージなの。ランニングキャラなの

「なんでも越前くんと付き合ってるって噂やで」
「ほんまか!?」
「ちがいます!」
「え、違うゆうとるで」

恥ずかしいからそんな大声でいわないでほしい…!本人もすぐ真正面にいるんだから!もうちょっと周り見てくれ!

「愛子、行くよ!」
「は、はああ!?」

越前くんは突然あたしの名前を叫びだした。すると金ちゃんの知り合いたちは茶化し始めたもんだからあたしは顔が真っ赤になってその場から逃げ出した

2011/2/5