青春を部活に捧げる | ナノ



「まだまだだね」

そう、先輩たちが言った言葉に、あたしは青春を感じた。一致団結。越前くん、今ここにいる仲間は越前くんを信頼してるよ。あたしも、その一人だよ

越前くんが敵に立ち向かう姿はずっと見てきた。越前くんが勝つと信じて、ずっと見守った。まあ全部の試合を見たかっていうとそうじゃないけど、これだけは言える。今、越前くんが、おじさまと重なって見えたことは

おじさま…今、わかりました。あたしが越前くんにこだわる理由が




「あれ、愛子ちゃん、泣いてる?」
「へ?そんなまさか〜」
「いや、お前涙こぼれてんぞ」
「…うそだ」

はじめてだ。あたしが越前くんの試合で感情を出すだなんて。こんなの越前くんに見られたら笑われて、馬鹿にされてしまう…

「…泣いてんの?」

げっ、もう帰ってきやがった!越前くんは先生との試合を終えて、汗だくのままあたしに寄ってきた

「え、もう終わった?ごめ、最後のとこ見てなかっ…」
「涙で見えなかったわけ?ったく…しょうがないなあ」
「…ごめん……でも勝ったのは分かったよ」
「ふーん。……表彰式終わったら」
「え?」
「終わったら、話あるから帰んないでよね」
「え、なんの?」
「いいから。あとでね」
「?」

話ってなんだ?まあとにかく、青学は無事関東大会優勝して全国大会に進むことになった。いや、長かったねこの道のり。みなさんよくがんばったよ。まあまず、乾先輩には感謝しよう









「で、話って…?」

表彰式も終わって、みんな帰るかーといいながら先輩たちや堀尾くんたちはそれぞれの帰路へと帰っていった。途中桃ちゃんが越前くんも一緒に帰ろうと誘ったけど、越前くんはその誘いを断ってあたしの元にやってきた

「…優勝」
「は?」
「優勝したじゃん。約束」
「約束?」

越前くんに忘れたの?って不機嫌な顔された。はて…なんの約束したっけ…?今回の賭けは…なんだったっけ?

「…あんた言ったじゃん。青学が優勝したら…名前で、呼ぶって」

名前…?ああああっ!!そ、そうだった…!なんかそんなこと言ってた!あたし!とんでもない失態…!ちょ、それ取り消しとかなんない?無理?

「あ、でもテカメガネ先輩はこれから乾先輩って呼ぶつもりだし!」
「それはあんたが勝手に呼んでるだけじゃん。…親父と区別つけたいんでしょ?」
「いや、たしかにおじさまも越前だから、会った時に区別しといたほうがいいかもしれないけど…」
「あんたって、なんだかんだ約束破ろうとするよね」
「そ、そんなことないじゃん!ファンタはおごってるし…」
「もういいよ」

え…。もしかして、あたしまた越前くん怒らせちゃった…?ああもう、いっつもこうだ。せっかく越前くんは約束を果たしてくれたのに…おめでとうってちゃんと言ってあげたいのに…

「俺が勝手に呼ぶから」
「……え…?」
「帰るよ。愛子」
「え、ええええ!?」

ああ。どこまでも純情な私よ。
2011/1/31