「うわー、ほんとに先生が試合出ちゃってるよ…」 さっき先生が選手だったってことを知ってショックを受けてました。だけど、先生がラケット握ってるとこみると、武士って感じがする 「真田は剣道でも優れているから、きっとその所為だろう」 「あーなるほど」 テカメガネ先輩が教えてくれたからなんとなくだけど、たしかにラケットが刀に見える。はいはい、幻って言いたいんでしょ。わかってますって。幻覚だから 「ところで上原」 「なんですか?」 「俺のノートを知らないか?」 テカメガネ先輩の試合が終わって不二先輩の試合の最中、体力が消耗してペンを握れないといいだしたから、あたしが代わってノートを書くことになった。テカメガネ先輩はそのノートの在り処をさがしているんだろう 「ああ、あのノート。ちゃんと取ってますよ」 「いやでもお前、さっきまで走ってただろう。その間はどうしてた?」 「大丈夫です。ずっと持ってましたから。走りながら書いて」 「…ノート見せてくれ」 あたしは自分が座っていたとこに置いていたテカメガネ先輩のノートを持ってきて先輩に渡すと、ノートを持つ手が震えていた 「おま…落書きだらけじゃないか」 「え?だってテカメガネ先輩のノートの取り方ってこんなもんでしょ?描写」 「描写もなにも全然理解不明なんだが」 「えー」 ったく、テカメガネ先輩はわがままなんだから。あたし的にはかなり自信作だと思うんだけどなー。とりあえずノートは先輩に返して、あたしは越前くんの応援に集中することにした。隣で先輩のすすり泣く声が聞こえたけど、まあいっか 風林火山、先生にはすごくぴったりな技だと思う。だけど同時に怖いとも思った。世界は広いな。こんな恐ろしい技を出す人がいるんだ 「ということで、技名あたしにも考えてくれませんか?」 「俺が決めちゃっていいの?」 「大丈夫です。適当に聞いただけですから」 「君って俺に対してひどい子だよね。つくづく思うよ」 となりに千石さんがいたから、手っ取り早く聞こうかなって思って聞いてみました 「ていうか君の彼氏、倒れてるけど君は気にしないの?」 「…越前くんが倒れるのなんてしょっちゅうですよ。大丈夫ですよ。忍耐力はある子ですから」 「…それでも平然としてられる君は、すごいと思うけど?」 「ほめ言葉として受け取っておきます」 「ひょっとして、やせ我慢?」 越前くんが倒れて、平然としているように見えるとよく言われる。たしかに顔色一つ変えないでいるからだと思うけどそれは違う。たぶん千石さんが当てたの初めてだ 「……そうですね」 あたしはどこまで素直になれないんだと少し後悔してる。いまさらだけどね 2011/1/30 |