バレンタインデーキッス! | ナノ

越前くんのことはいつも且つも好きなわけじゃない。ただ、運動会で同じ記録係だったくらいかな。そのとき初めて、彼の性格を知った。噂じゃ、天才テニスプレーヤーなんて言われてるけど、計算は間違ってるし漢字がいまいち分からないとことか、なんか可愛いと思った。名前を書くのに江頭さんを江額さんと書いたのには爆笑だった。運動会間は越前くんともそれなりに話してた。仲も悪くなかったと思う

だけど運動会って一時の熱のようなものがあるから、ある程度文化祭あたりでまたその熱が浮上するもんだろうけど、その時あたしはステージの照明とかで忙しく、彼と同じ係にもなれなかった。熱はいつのまにか消沈

クラス?同じクラスですけど?同じクラスだからって気軽に話せるほどあたしに積極性はなかった。席はなぜか隅と隅だし、掃除時間もあたしは教室、彼は渡り廊下。自然と交わることもなくなってしまった。

だが、このバレンタインこそは!文化祭での屈辱を晴らすべく、あたしはバレンタインデーに立ち上がった。越前くんに、チョコを渡すんだ


と、決めたのはいいものの、彼は人気者だということを計算に入れていなかった。同じクラスなのになんで知らないかって?そんなに彼が人気と思ってなかったからだよ!テニス部で有名といえば手塚先輩とか不二先輩あたりだけかなーって思ってたら越前くんもその中に組み込まれてたもんだから、焦るあせる

結局バレンタインもあっという間に放課後を迎え、部活時間に突入…してもテニス部はもはやあたし一人が入れるような余地はなかった。敵は越前くんのファンだけじゃない。様々な人たちを目的とした子たちが集まってる。これじゃ昼間より渡せる確率少ないじゃん!


…午後6時。手袋とマフラーをしているのに足の寒さ対策ができてないためにひざはもう真っ赤になってます。女の子たちはみんな帰ってしまったようだけど、なぜか男子テニス部は未だ残っている。大方部長さんの話が長いんだろうとあたしは踏んでいる。ていうか長すぎだろおお!もう暗くなってんですけど!下校時間とっくに過ぎちゃってますけど!?

ああ、もうだめだ。寒すぎる。眠くなってきた。パトラッシュ…頼むから越前くん連れて来てくれ「ねえ」うわ、パトラッシュ喋ったよ…あたし犬と話せるようになったわけ…?

「ねえ、あんた死ぬよ?そんなとこで寝たら」
「え、え?なに?え、越前くん!?」

揺さぶられてようやくわかった。越前くんだ…越前くんだ…。パトラッシュかと思ったよ。ていうかほんとに呼んできてくれたんだね。ありがとうパトラッシュ!

「…で、なにしてたの?こんな時間まで」
「え、っと…はいこれ」
「…チョコ?」
「あ、よくわかったね」
「そりゃそうでしょ。今日それしかもらってないし」
「そりゃそうだ」

越前くんと話したのはひさしぶりだ。運動会のときと変わらない態度で接してくれる。あたしにはもう、それだけで十分な気がした。越前くんはあたしのチョコを受け取ると早速包みを破り、中身を取り出した

「え、もう食べるの?」
「いいじゃん。ちょうど腹減ってたし」
「他の人のもあるんでしょ?」
「かばんにあるから取るのめんどい」
「なるほど」

そして越前くんの口の中にチョコが入ると、彼はすごく苦い顔をした

「か、硬い…」
「あ、寒かったから凍っちゃったかも」

運動会より甘い思い出

@さとみさん
今回はバレンタイン企画に参加していただきありがとうございます。ずいぶんと長丁場になってしまいましたが、越前くんのお話たのしく書かせていただきました。さとみさんの案に感謝です。青春も愛してくださってるなんて、もうね自然と笑みがこぼれて^^さとみさんも良いバレンタインデーをお過ごし下さい。
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