「チョコくれチョコ」
「……………………」
あのねえ、今日は丸井ブン太にチョコをあげる日じゃないんだよみんな。そこんとこ間違えてもらっちゃ困るでしょ。好きな人にあげる日だよ。それをなんでみんなブン太にあげちゃうかな…
「あたしは別の人にあげるの。ブン太の分はないよ」
「はああ?お前間違ってる!今日は俺にチョコをあげる日なんだぜぃ?」
「お前が間違ってる。世の中すべての女の子がブン太にあげると思ったら大間違いだよ」
自意識過剰もいいとこだ。そのうち糖尿病になって大好きなチョコも食べなくなっちゃうよ。それってブン太にとっては本望かどうかわからないけど
「んで、お前は俺以外の男にあげるんだろうが、誰にあげんだよ?」
「おしえなーい。言ったらブン太が言いふらすかもしんないしー」
「おまっ、真田にあげんのか!あいつはやめたほうがいいぞー…!チョコ粉砕されるぞー!」
「誰も真田にあげるって言ってないでしょ!?」
「うっわ真田可哀想〜」
くっ…人の揚げ足ばっか取ってこいつ…!まあいい。あたしはあたしで好きな人にあげる。それでいいんだ。ブン太に食われるよりマシだ
「よかったら…このチョコ受け取って欲しいんだけど…」
彼はチョコを受け取ってくれた。チョコのラッピングの中に手紙を仕込んでおいた。彼は見てくれるだろう。あたしの気持ちを知ってくれると思っていた
「…お前、仁王にチョコあげたのかよ」
チョコをあげて一日が過ぎた明くる日、ブン太はあたしの昨日の行動を知っていたかのように告げた
「なっ、なんであんたが知ってんのよ!」
当然のこと、あたしは動揺を隠せなかった。あの日は周りに誰もいないところに仁王を呼んだから、見てた人はいないはず…。なのにブン太はそれを知っている。なんともおかしな出来事
「…昨日、仁王が部室にチョコ持ってきたんだよ」
「………」
ただ、ブン太の様子からして、勘の良いあたしは薄々気づき始めた。ああ、そういうことか。と
「仁王は、甘いもんあんまし好きじゃねえみたいだから、半分ぐらい俺にくれた。……その中に、お前のが…」
「もういいよ」
「名前…」
もういいんだ。仕方ないことだ。彼は人気者だから、チョコの処理にも手こずってしまう。だけど、あたしはその少ない希望に賭けていた。倍率が高すぎたんだ。手紙を呼んでもらえるなんてそれこそ成功率は激減してしまう
「…俺が、食ってやったから」
「……うん」
「お前のチョコ、うまかった…」
「……ありがと」
「お前の気持ちも、俺がもらっといたから」
「……え?」
ブン太に口付けされて気づいたけど、こいつ来るときもチョコ食ってきたな。ほんのりとチョコの味が口の中に広がった
「ったく、最初から俺にしときゃよかったんだよ。チョコも、俺も」
@結衣さん
バレンタイン企画に参加していただきありがとうございます。そしてstkありがとうございます うふふ。チョコといえばブン太ですよね。ということでたのしく書かせていただきました。これからも更新がんばっていきたいと思います。ありがとうございました