「…で、なんで俺が?」
「お願い!越前しか頼める人いないんだ!」
めんどうなことに付き合わされた。同じクラスの名字は俺との間に両手を合わせ、強引に頼んできた
「…めんどい」
「そんなこと言わずに!あたしが英二先輩にチョコ渡せるように仕立ててくれるだけでいいから!」
用件はこれだ。英二先輩にバレンタインチョコを渡すのに、人が多くて手出しできないから上手く呼んできてくれということだ。でも名字が頼むのはそれだけじゃなく、雰囲気作りまで俺に押し付けようとしている
「そんなの自分ががんばればいい話じゃん。他人の力なんて借りるべきじゃないと思うけど」
「それはあたしも十分承知してるよ!」
どこが?
「だけどあの状況見てあたし一人で太刀打ちできるもんじゃないってことは一目瞭然だよ!」
名字が言うようにためしに英二先輩のとこに行って見ると、こいつが言っていることは本当らしい。英二先輩の周りには女の先輩たちで溢れかえっていた。とても年下の女子が入れる余地はない
「だめだああ!とてもじゃないけど英二先輩にチョコが渡せない!これじゃあ越前でもダメじゃん!」
「そうそれじゃあ俺帰る」
「待って待って待って!今の嘘!越前がいないとダメ!」
めんどくさい…。これ以上は付き合ってられないと判断した俺は、手っ取り早くこの仕事を終わらせようと思った。なんと言ってもファンタで釣られている俺は、せっかくタダでもらえるファンタが捨てがたい
「じゃあ俺英二先輩呼び出すから、あんたは早くチョコ渡して俺にファンタおごってね」
「くっそおお前ファンタしか目がないのか。とにかく頼んだ!」
そして俺は一人先陣切って英二先輩の元へと向かっていった
「英二せんぱ…」
「きゃー!越前くん来てるよー!」
「うっそ!3年フロアに来るとかめずらしくない!?」
「ちょ、ちょっと…!」
…なにやってんだあいつはー!!!
越前は先陣切ったのはいいものの、逆に先輩たちに囲まれて動けない状態になってしまった。ミイラ取りがミイラになってどうすんだよ!
ちっ、越前を選んだのは選択ミスだったか…。女の先輩たちには越前が珍しすぎて虜になるだけだ
「仕方ない。帰ろう…」
「あれ、名前ちゃん帰っちゃうの?」
「………へ?」
振り向くと越前を同じように囲まれていたはずの英二先輩があたしの背後に立っていた
「え、英二先輩…!?なんで…」
「んー?なんかおちびが名前ちゃんが用事があるって言ってたからさ」
「え、越前が…?」
あいつ…!ちゃんと仕事やってくれたのか!役立たずとか思っちゃってごめんね撤回する!あとでファンタ2本あげる!
「で、俺になんの用?」
「え、ええっと…」
周りには女の子はあたしだけしかいない。こんな状況、あたしだけが独り占めできるなんて、嬉しすぎる
「チョコ…よかったらもらってください!」
英二先輩は、今までに見たことがないくらい喜んでくれた。ああ、バレンタイン最高
@ウカさん
バレンタイン企画に参加していただきありがとうございました!わかりやすいシチュエーションを教えてくださって、楽しく書かせていただきました。これからも自分のペースで更新していきたいと思います。