seisyun | ナノ


今年からヒップホップなどのダンスが必修授業となった。はっきり言って俺はダンスをしたことがない。俺は先生やクラスメイトから注意や指導を受けながら、授業内で練習を進めていた。ダンス自体に大して抵抗はない。だが、人前で踊りを見せることが俺にとって苦痛なのだ。テニスにおいて人に見られるのは慣れているが、ダンスに関してはテニスより慣れていない上に認めたくないが、下手だからあまり見られたくない。…だがここで終わるのは性に合わない。俺は部活の休憩時間の間に、少しだけダンスの練習をすることにした。くそ、ここのターンが苦手だ…。

「海堂先輩、ダンスお上手ですね」
「……………………………うわあああ!」

ターンした後、俺の視線の下にはしゃがみこんでいる上原がいた。俺はあまりに驚きすぎて20cmほど後ろに下がった。こいつ、いつからそこにいたんだ。

「お前、なにやってんだ。練習はどうした」
「休憩中なんですよ。お水飲みにきたらなんか音がして、来てみたら海堂先輩が」
「……………いつからいた」
「ターンが決まらないあたりから」

最悪だ。よりにもよって桃城の次に見られたくないやつに見られてしまった。こいつは桃城と仲が良いし、なによりよく喋るやつだ。桃城に密告するに違いない。

「………このことは他言するな」
「えっ、しませんよ!ターンができない海堂先輩なんて!」
「 声 が で か い ん だ よ 」

このおしゃべりが他に言いふらすなんてことは絶対に無理だ。時間の問題だ。これは一刻も早くダンスを完璧にするしかない

「いいからお前は練習に行け。そして二度と来るな」
「海堂先輩ひどいじゃないですか…それって今やってるダンス実習のやつですよね?あたしでよかったら教えますよ!」
「断る!なんで一年に教えてもらわなきゃなんねーんだ!」
「あっ海堂先輩あたしのこと見下してますね?あたしこれでもダンス上手いんですよ〜。プロ並みですよ〜」

上原は得意げにダンスを披露するが……これは俺以下と言ってもよいだろうか。唯一ターンしかできていない

「どうですか!」
「帰れ」
「なんでですか!」

話になんねえ。そして一体どこからそんな自信が生まれてくるのかわからん。俺は上原に背を向け再びターンの練習に取り組んだ。すると

「…海堂先輩、ブーメランスネイクみたいに腕を振ったらターンできるのに」

と、上原はそう言い残し、俺の前から去って行った。

「……………あ」

それから俺は、ターンが完璧にできるようになり、クラスの中でも上達した方になった。ダンスへの恥も、気づけばなくなっていた。


「あたしのおかげですよね?」
「ちがう」

2012/06/20
芭蕉さん、この度は青春フリリクにご参加くださりありがとうございます!芭蕉さんは最近youを閲覧してくださったようで、一気に読むのが大変だと思います。お話の多いサイトで申し訳ないです・・。青春についていろいろと感想もいただき、ありがとうございます!主人公がすごくいい子だなんて・・初めて言われたような(笑)結構悪役っぽく書いているつもりでした(笑)海堂くんのお話を書いていて、芭蕉さんのリクエストが詳しく書かれていたのでとても書きやすかったです。たのしく書けました!ありがとうございました。