seisyun | ナノ


「駅前のカフェのケーキ」
「は?」

一年二組の教室で、越前くんを目の前にし、あたしは発言した。

「ケーキがなに」
「あたしが勝ったら、ケーキおごって」
「なにに勝ったら」
「来週のマラソン大会」

近々マラソン大会が行われる。青学はスポーツでは名門校だから、結構走らされるとかなんとか言ってたけど、まああたしにかかれば余裕なわけで!そのマラソン大会で、あたしは賭けをしようと思い越前くんに宣戦布告しにきたのだ。

「あたしが早く着いたらあたしの勝ち。男子なんだしハンデあっていいよね?」
「やるって言ってないんだけど」
「逃げるのがお嫌いな越前くんが、賭けに乗らないわけないでしょ」

ていうかいっつも勝ったらおごれとか言うくせに、乗らないとか筋違いでしょうが!

「……わかったけど、俺が勝ったら一週間ファンタね」
「……ファンタ好きだよね」

ということで、賭けは決まった。あたしはいつも以上に走るようにし、練習が終わっても走って帰るようにした。

そして当日。
絶好調のスタートを切ったあたしは、周りの陸上部に劣らないくらい上位のほうを走っていた。ははは、日ごろの陸上部ばりの走りをなめないでほしいね!伊達にぶちょーに走らされてないんだから!あたしは自分のペースを保ちながら序盤を走った。

すると、となりから「お先に」の声が聞こえた。越前くんだ!うわっ…みんなそろそろ息が続かなくなって喋らない子増えたのに、普通の声で言って走ってた!むかつくー!あたしは越前くんをめがけて走っていって、越前くんと並走する形になった。

越前くんに負けず劣らずで走っていたあたしは、もう周りが見えなくなってて、越前くんに「いつまで俺と走るの?」って聞かれて、気づいたら女子の折り返し地点を当に過ぎてしまっていた…!しまった、これじゃあたしが越前くんにハンデあげてるようなもんじゃん…!あたしはすぐさま引き返して全速力で走って行った


ようやく女子の上位組のほうまで戻ってこれたけど、さっきよりは順位も落ちてる…。仕方ないけど、くやしい…!越前くんさえいなかったら絶対いい成績だったのに…!負けるもんかと全力をつくして走っていた。するとまたしても越前くんが隣にいた!…えっ!?速くない越前くん…!?男子と女子との距離の差は全然違う。それなのに、もう女子の上位の方まで来てるなんて…!超人すぎやしませんか!

もう体力もそろそろ限界なあたしは、スピードが落ちてきていたけど、越前くんに負けたくない一心で、なんとか食いついていた。…テニスでは越前くんに負けるけど、走るのだけは越前くんには負けたくない!





「で、結局同着?」

あたしは走ったあと死んだように倒れこんで、なにも話せなかったけど、越前くんは何分かするとぴんぴんしていて、男女の差を恨みました。

「ま、あんたにしてはがんばったんじゃない?」
「…………………」
「………ケーキ、おごってやるから、あんたもファンタおごってよね。これでいいでしょ?」

あたしはこくり、とうなづいた。


2012/07/16
恋さん、この度は青春フリリクにご参加くださりありがとうございます。持久走大会、というなんともヒロインにぴったりなシチュエーションをいただいて、たのしく書くことができました。スパポジとは、スパルタポジションの略ですかね。ヒロインにぴったりです(笑)これからもたくさん走らせていきたいと思います。ありがとうございました。